第6話 JRS1 ジャパン・ロボット・スマートフォン

 スマートフォンは、変形した。


 2020年。宇宙ロボットはできなくても、宇宙戦艦はできなくても、日本のスマホは変形した。


 誰もが思っていた。

「2020年の東京オリンピックが終わったら、日本は戦後最大の大不況がやってくる。」

 日本国は、増えすぎた国の借金のため、世界の国々の金融から見放され、日本国はデフォルト、破綻するかに見えた。


 しかし、日本沈没の危機を救ったのは、鉄道会社だった。

「今日は、ジャパン・ロボット・スマートフォン(通称、JRS)のスマホ事業参入発表記者会見にお集まりいただき、誠にありがとうございます。」

 鉄道会社の日本鉄道の本業は、鉄道事業。しかし、日本は人口減少社会であり、本業の鉄道で稼げなくなった。その時、膨大な内部留保した現金で、不甲斐ない日本の電機会社大手の日本電気を買収し傘下に置いた。

「これが我が社のスマートフォンです!」

会場には、1台の金色のスマートフォンが机の上に飾ってあっただけに見えた。

「トランスフォーム!」

 次の瞬間、金色のスマートフォンは変形して、頭、両腕、両足が現れた。そして、スマートフォンは二本足で立った。

「オオオオオオオッー!?」

 それを見た会場のテレビ局の記者たちは驚いた。これが本当の度肝を抜かれたということだろう。

「た、立った!? スマートフォンが立った!?」

「そんなバカな!? 有り得ない!? スマホが立つだなんて!?」

 誰もが信じられないという表情で、会場は一種のパニック状態に陥った。

「こんにちは! 本日は、JRSの発表会場にお越しいただきありがとうございます。そんなに驚かないで下さいよ。眩しい!? フラッシュはやめて下さい!?」

 JRSの金色のスマートフォンは喋った。記者たちの無数のカメラのフラッシュを眩しがるそぶりもみせた。

「話した!? スマホが話したぞ!?」

「プログラムじゃない!? 自由会話だ!?」 

「スマートフォンが、フラッシュを眩しいというのか!?」

「こんなAI、見たことが無いぞ!?」

 金色のスマートフォンの会話や動作は、従来のロボットのカクカクした感じはなく、完全に人間の様にスムーズだった。

「これが我が社のスマートフォンです。これからのスマートフォンは、ロボットに変形するのです。そして、ロボットは最先端のAIが搭載されいます。」

日本の脅威の開発メカニズムである。

「本社に許可を取れ! 緊急生放送だ! ええい~! 勝手に放送してしまえ! 俺が責任を取る!」

 こうして一部のテレビ局やネット放送局は、JRSのスマートフォンを生放送した。

「オー!? マイ!? ゴット!?」

「欲しい! あのスマホが欲しい!」

 日本の鉄道会社が生み出した新世代のスマートフォンは、全世界の人々に衝撃を与えた。世界中の人々が、テレビから流れてくる日本の新しいスマートフォンの映像にかじりつくように見た。

「何というスマホを生み出したんだ!? JRSのスマホは化け物か!?」

 全世界の人々が、JRSのスマホを買おうと、他社のスマホを買わなくなった。それは、アメリカのりんご携帯電話会社、中国の遥か彼方携帯電話会社も例外ではなかった。両社とも、僅か3カ月で倒産した。

「日本家電は、ガラパゴスといわれ、世界の最先端過ぎて、世界基準にあっていませんでした。ですが、世界で1番、より良い商品を作れば、日本ガラパゴス基準の素晴らしい日本製品が世界に広がるということです。今までの家電メーカーが良い電化製品を作っていなかった、宣伝していなかった、売り方を知らなかったということです。」

 これは家電に初めて参入する、家電業界のしがらみがない鉄道会社ならではの強みであった。

「今回、我が社がスマートフォン業界に参入するにあたり、買収した日本電気の技術をベースに、開発協力に日本各地の町工場の秀でた技術と、ジャパロボ開発機構から、ロボットの技術の提供がありました。」

 JRSの開発には、基本は、スマホを作るだけの技術はいる。そこに日本各地の町工場の技術と日本ロボット開発機構からロボット技術が融合して、スマートフォンのロボット化に成功した。

「これから世界の全てが変わります。人間とスマホが共存する生活が始まるのです。」

 言葉通り、JRSのロボットに変形するスマートフォンが世界を変革していく。

「でも、スマホのロボット化の技術の流出は大丈夫なんですか?」

「ご安心ください。最新のスマホは日本国内だけで販売します。もしスマホを解体したり、データを分析しようとしたり、国外に持ち出そうとしたら、その時は、爆発するようにプログラムされています。また世界に販売する機種は従来の技術のAIとロボット変形モデルです。スマホのOSをいじった所で、国内版のオリジナルが手に入らないのでは意味はありません。」

 海外電気メーカへの技術流出とコピー商品対策は完璧だった。今までの日本は液晶テレビ、スマートフォンなど、全ての分野で最も良い商品を作りながらも、全て外国の電機メーカーに、技術を盗まれ、大量生産され、敗北を余儀なくされてきた歴史から学んだ対策であった。

「日本に行かなくっちゃ!」

「日本に住んで最先端のスマホを使うんだ!」

 全世界の人々が、JRSのスマホを買おうと、他社のスマホを買わなくなった。最先端のスマートフォンで日本は、国の借金を返済し、富裕層の移住者を獲得した。

「何というスマホを生み出したんだ!? 日本のスマホは化け物か!?」

 それは、アメリカのりんご携帯電話会社、中国のみかん携帯電話会社も例外ではなかった。世界中の人々がJRSのスマートフォンを買おうとした。両社とも、僅か3カ月で倒産した。

「これからだ。これから本当のスマホ生活が始まるんだ。ワッハッハー!」

 日本国は、たかがスマートフォンで、あっという間に国をよみがえらせたのだった。

 つづく。

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