扉の向こうは不思議な世界(敢えてそのまんまのタイトルで勝負!)

齋藤 龍彦

第1話【玄関扉】

 『世が世なら——』ということばがある。俺の家、今は無き祖父の代はたいそうな資産家だったらしい。だから世が世なら俺はお坊ちゃまで二千万円程度の外車で送り迎えされていた——らしい。

 そう母親から聞かされること数度だがもう止めて欲しい。空しくなる。


 当時の経済環境の激変により当時の豪邸は差し押さえられ今の我が家に残っている古の栄光は————かつての玄関のドアだけである。(これがとられなかったのは差し押さえの直前に安物と交換でもした、のだろうか?)

 高級な木材を使った一枚板の玄関扉。そのドアだけが我が家の物置で昔々の栄華を語っている。


 あーあ、と思っていた。くだらない、とも思っていたドア。しかしこれが一枚板であることを知ったのはつい最近のことだ。

 もしかしたらスゴイ値のつく物かもしれないと、俄然興味が湧いてきた。もちろん俺が勝手に売っぱらうことはできないが、いわゆる『家に眠るお宝』ってやつだ。

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