第40話 1通のハガキ

普段開けないポストを2ヶ月ぶりくらいに開いてみると、テレクラや不動産屋のチラシに混じって、1通のハガキがありました。


「○○学園創立30周年記念同窓会のお知らせ」


僕が中学高校を過ごした学校の同窓会の案内でした。


開催場所は都内ではなく、学校近くのホテル。で、1学年の同窓会ではなく、卒業生全員に配布されたものと思われました。


卒業生全員となると、いかに中高を通じて3クラスしかなく、在学していた時の人の顔はほぼ全員が全員わかるとはいえ、あまりにアバウトなので、参加は見送ることとしましたが、久しぶりに母校のことを思い出しました。



ちょうど今頃は学園祭の時期。


自由。闊達。をモットーとする創立間もない学園だったので、学園祭の準備の一切は生徒の手に委ねられており、先生がするのは、予算の総額を通達するだけ。


学園祭の実行委員というのが、ほぼ立候補で決まり、実行委員会がすべてを運営します。


中高6学年合同なので、各企画も学年など関係ありません。やりたい人がやりたい人を学年を問わず集めます。なので、高3と中1というオトナとコドモのような組み合わせもままあります。


ポスターやバッジ、ノベルティ関連も生徒が企画します。僕の描いたワニのキャラクターグッズなども商品化されたりしました。


様々な模擬店やライブが披露される中、僕が中高を通して熱中したのが、映画製作と「迷路」でした。


映画は自分で脚本を書き、仲間を集め、撮影し、編集して、音を入れます。学校には、性能のいいビデオカメラと編集器材あったので、それを使いました。音は、著作権に触れないよう、自分達で効果音を作り、ミキサーで編集したものを後から被せます。


その年によって、作りたいジャンルが異なるので、いろいろな作品を撮りました。

年に2本撮った年もあります。


演劇モノ、時代劇、お笑いスプラッター、ロードムービー、そんな映画を撮っては学園祭で上映していました。



映画の準備は学園祭の前に完全に終わってしまうので、もうひとつ熱中していたのが「迷路」です。


これは、椅子と机とダンボールだけを使って、真っ暗な巨大な迷路を作るもので、年をおう毎にノウハウと技術が蓄積され、もっと巨大にもっと巨大に となり、最終的には、校舎の1フロア全部を迷路にしてしまうまでになりました。


事前に迷路の設計図を描き、床のリノリウムのタイルのマス目に沿って、机を並べます。机と机は紐でがっちり連結します。(必要な机の数は事前に計算しておく)机を迷路の形に配置し終わったら、全体をダンボールで覆い、通路を仕上げます。机の上にもダンボールを隙間なく敷き詰め、天井を作ります。(この時点で通路は真っ暗)最後に窓をダンボールで覆い、光を一切遮断します。


迷路はかなり綿密に設計されているので、出られない人も後を絶ちません。


作り手側はメンテナンス用にどこが通路で、どこが机かを天井側に書いてあるので、もし暗闇で出れなくなりヘルプ要請があった場合には、天井をあけて救出できます。


入ってみて、面白いと思った人は翌年から作り手側に手を挙げてきます。最終的には50名程度がこの迷路作りに係わっていました。



実行委員会側で用意する名物企画としては、「握手券」というものがありました。

学園祭の3日間のみ有効。握手券を渡された人物は、その人との握手を拒めない というものです。


生徒一人に配られる握手券は3枚のみ。誰と握手するかは、当人が選びます。

普段は恥ずかしくて話すことさえできない憧れのあの子に渡せば、その子と握手してもらえるのです。これは人気でした。


握手券は、ここぞという時の武器なので、開催期間中最も渡されるのが多いのが、学園祭の終了間際。人気のある子には列ができます。


(この「握手」ってトコが幼くて良い)




学園祭の最後は、出たゴミを北グランドに集めてのキャンプファイヤーです。

だんだんと夕闇になってゆく北グランドに炎が赤々と燃えます。


そして、その炎が消え、闇になった瞬間、花火が上がり、学園祭は終わります。



という訳で今日は、1通のハガキから思い出した青い学園祭のお話 でした。

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