第38話 そっち方面

中高は、エスカレーター式の私立だった。

山をひとつ丸々使って建てられたその学園は、広大なキャンパスに本館・講堂・図書館・中学棟・高校棟・体育館などが点在し、森の中を通る渡り廊下がそれぞれの建物を結んでいた。


山を丸ごとなので、建物が建っている場所にはそれぞれかなりの高低差があり、階段のすごく多い複雑なつくりになっていた。それぞれの科目ごとに社会科棟・理科棟・美術棟・武道場・プール・弓道場などもあった。高低差のある森の中に芝生とレンガが巧みに配され、とても美しいキャンパスだった。


その地域では珍しく校内暴力などの問題もなく、進学率も良かったその学園には、周辺の地域の小学校からスポーツ万能で勉強もできるという感じのいわゆる「番長クラス」の連中が集まってきていた。そのため、自由闊達でお互いを尊重するリベラルな雰囲気が満ち溢れていた。


僕は、中学の頃はほんとにちっちゃくて、少し髪が長く、女の子みたいな感じだった。


入学すると、「かわいい子が入ったらしい」との噂が流れ、中1のクラスにわざわざ高校棟から休み時間ごとにたくさんの人が見に来ていた。


ちっちゃいのに元気で飛び回っていて、気が強く、よく笑い、よく転ぶ。


(後に聞いたところによると、中性的な雰囲気で妙な色気があったのだという。)


が、当時は自分のそんな感じにまったく気付いておらず、なんで人だかりができるのか、さっぱりわからなかった。


特に同性の男子から圧倒的な人気があったように思う。


授業中に寝ていると、髪をさわさわ撫でられていたりすることがよくあった。


席は生徒同士が勝手に決める方式だったのだが、僕はいつも後ろから二番目の窓側の席を陣取っていて、周りをぐるりと囲むように面白い奴らが集まっていた。


僕の真後ろの席をいつも取っていたバスケ部のクニは、スポーツ万能でかっこよく、女子からモテモテだった。(そして何よりエロかった)


クニのうちは、学校からすぐの歩いていける距離にあり、よく遊びに行っていた。


僕はクニに圧倒的に気に入られており、休み時間などはくっつきたがるクニから僕はいつも逃げ回っていた。


(結局足の速いクニにちっちゃい僕はすぐにつかまってしまうのだが・・・)


ある日クニの家にみんなで泊まることになり、数人で遊びにいった。


覚えたてのお酒をドキドキしながら買って、クニの部屋で酒盛りをした。ギターやベースも加わって楽しかった。


僕はちょっとのお酒でトロトロに酔ってしまい、ベッドに寄りかかってくたっとしていた。


いつも気が強く、飛び跳ねている僕が、めずらしくふにゃっとしている感じが火をつけてしまったのかも知れない。 案の定、襲われた。


トロトロに酔った僕はそれでも抵抗したが、クニはヘビのように絡み付いて離れない。


弱点だった耳を齧られ、その瞬間身体からちからが抜けてしまった。


「クニっ、ストップ。ストップ・・・」





 (つづく)

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