恐怖はSNSからはじまった(敢えてそのまんまのタイトルで勝負!)
齋藤 龍彦
第1話【授業・クラスのみんなで始めよう、SNS!】
教卓に両手をつき1組のクラス担任が授業を始めたところだ。
「タブレット端末はそれぞれ行き渡ったなー?」三十代前半、まだそこそこ若い担任の、非常によく通る声が教室の隅々にまで響く。それとは対照的な魂が抜けたような返事が戻ってきた。
しかし担任はそれを不満とするでもなくこの授業の趣旨について語り始めた。
「君たちはもう高校生だし、この中にはもうSNSを始めている者もいるだろう」
担任は僅かな間をとる。
「だがやっていない者もいる。今日の授業は『SNSをやっていない者にもSNSを始めてもらう』という目的の下実施される。むろん私の独断ではないし、校長の独断でもない。国の決めた新たな教育方針の一貫だ」
担任は教室中を見廻した。
「SNSについては『今は必要ない』だとか『あまりやりたくない』と思っている者もいるだろう。だが今は必要なくても近い将来必ず必要になる。例えばもう就職活動はSNS無しには成り立たないという状況に何年も前からなっている」
(めんどくせーな)二郎は思った。
「——『そんなものは必要になったら始めればいい』、そう考える者もいるだろう——」
(そのとーりじゃねーのかよ)
しかし担任は教育方針に則り忠実に自らの役割を果たし続けていく。
「——だが『それからでは遅い』というのが現代のトレンドだ。日本語に訳せば『趨勢』となる。『時代の趨勢』というやつだ」
またも二郎は思った。(そーいうのに逆らっちゃいけねーのかよ)
「——SNSは使い方を間違えると自分の身に危険が及ぶという負の側面がある。知っているのと知らないのとでは大違い。想定されるトラブルを予め避けるという意味で高校生のうちから正しいSNSの使い方を身につけなくてはならない。『もうSNSなんてとっくだよ』と内心思っている生徒も『正しい使い方』をしているかどうかについては別問題だ。『もう始めているから』と油断することなく授業に真面目に取り組むように」
(チッ)二郎は内心舌打ちした。
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