豚の葬列

アレ

 えらそうな人が机の前に座っている。机は大きい。後ろには窓がある。そして脇には秘書が一人いる。


「豚、だねぇ。君は豚を知っているかね?」

 「は?」

「豚は食われる。それは避けられない運命だ。だが!豚はそれでも肉屋に従う。どこまでも肉屋を信じ、肉屋を敬い、肉屋を拝みさえする。なぜか!己の運命を知らないからだ。」

 「はぁ…」

「それでも豚は豚であり続けるしかない…」

 「そうですか…」

 えらい人は立ち上がり、身振り手振りを加え始めた。

「豚は食われるためにのみ生きる。でも豚はそのことを知らない。知らないから気にも留めない。そして豚はただ生きて行く…」

 「はい…」

「豚と肉屋の物語は、そういうものだ…君も知るといい。」

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