第9話 血の繋がった妹と弟がいたなんて
わたしと悠真はさっきのレストランにいた。
テーブルを挟んで、向かい側にいるのは、あの女の子と父さんが座っていた。
「陽菜乃、大きくなったな」
「うるさい。勝手に家を出たくせにさ。暢気にのそんなこと、言えるよね?」
わたしは女の子と男の子のことが気になった。
「あぁ……陽菜乃の妹と弟だ。
その言葉に信じられなかった。
「この子の母さん」
「そうだ。その頃に交際していた恋人で、離婚して、すぐに再婚した。すまない」
わたしは怒りと悲しい感情が渦巻いていた。
小さな頃の辛い記憶がよみがえってきた。
涙が溢れてくる。
「いつもそうだよ。都合が悪かったら、うちや母さんを殴ってひどいことを言ってさ。勝手に恋人は作るし、父親らしいことをしてくれたこと、無かったじゃん! なんで、陽菜子ちゃんと陽斗くんにはして、うちにはしないのさ」
「陽菜乃、いい加減にしろ!」
「もう、父さんなんかじゃない! もう二度と来ないから。陽菜子ちゃんと陽斗くんには絶対にうちみたいなことをしないで。お願いだから」
わたしは走って、レストランの外に出る。
なんで家庭を持ったの?
あんなに苦しめて、心を傷つけて。
まだ全然許す気にすらならない。
「陽菜乃!!」
悠真が後ろから抱きしめてくれる。
わたしは涙が溢れてくる。
「悠真……うわぁぁぁ」
悠真に肩を抱きしめられ、大声で泣き出してしまった。
もう精神的にも参ってしまってるから、今日は帰ることにしたの。
わたしは嫌になる。
陽菜子ちゃんと陽斗くんのことが頭によぎった。
とても幸せな家族だったな、昔のことを教えてないような気がする。
あのときみたいに、陽菜子ちゃんにしているなら絶対に許さない。
「陽菜乃、全然違ったな。おじさん」
「うん。絶対にうちみたいなことをする。わかる」
「妹がいたんだな、ひとりっ子だと思ってた」
「異母妹弟って、やつ? 小説かドラマみたい」
「言い過ぎ、おばさんには言うのか? 今日のこと」
「う~ん、言ってみるよ」
電車のなかで話をしていた。
「陽菜子ちゃんと陽斗くん、わたしに似てた。小さな頃にそっくりなんだ」
「うん。でも、陽菜乃の方が好きだな」
「え~」
「お前に何年、片想いしてたか、わかるか?」
「結構、長いよね。」
「十年くらいだったかな?」
「長いね」
わたしも同じくらいだったかな? 悠真のことを片想いしてたんだ。
今日のできごとを母さんに話してみた。
母さんは少しだけ動揺していたけど、まだ父さんのことを絶対に許してないんだよね。
少しだけ陽菜子ちゃんと陽斗くんの笑顔を忘れることはないと思った。
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