第7話 文化祭

 それから、数ヵ月くらいが経った。

 文化祭に向けての準備がスタートした。それと並んで、バンドの方でも練習が進んでいた。

 悠真とはあんまり、関係は変わってはない感じだ。

 バンドの演奏時間帯は……ちょうど体育館で、ダンス部が終わった直後だった。

 お客さんと一緒に盛り上がれそうな曲をメドレーで、演奏することになった。

「真湖ちゃん、咲空ちゃん。ここのメドレーは大丈夫かな? 男子も!」

「うん。陽菜乃に頼んでよかったね、組み立てるのは、上手いからね」




 東京駅から乗ると、電車で帰ることにした。

 悠真は普通に接してきてくれる。わたしはもう少し、進んでもいいと思ってるけど。

「悠真。あのさ、ずいぶん前に言ったこと、どう思った?」

「え? あ、嬉しかったよ」

「わたし、どうしたのかな? って思ったから。不安で」

「俺は陽菜乃のこと、守りたかったんだ」

 最寄り駅に着いたときに話してくれた。バスも混んでるので、歩いて帰ることにした。

「だって、お前に初めて会ったときが、あんなに傷だらけの状態で駆け込んで来たときだったもんな」

 初めて会ったときも、引っ越して直後に父さんからのDVで悠真の家に駆け込んで来たときだったから、傷だらけの状態だったはず。

「うん。あれから、離婚して、名字も変わってからは、悠真に初めて話せるようになったの。家族のことがね」

「うん。そうだよな、絶対にね」

「わたし、悠真が道標の気がするの。大好きです」

「ストレート過ぎない? その言葉」

 悠真が照れくさそうに笑っている。

 そっと、手を繋ぐ。

 心も温かくなる。













 文化祭当日。

 クラスのシフトとかもなんとか終わり、バンドの演奏する時間帯になり、体育館のステージ裏で待つことにした。

 制服のままで、バンドのメンバーとお揃いのバンダナを手首や髪に巻いている。

 バンド『Sky Blue and Summer』のステージが始まろうとしていた。

 わたしはめちゃくちゃ緊張していたけど、悠真が笑っている。

 でも、その笑顔に緊張がほぐれた。

「行くぞ! みんな」

 リーダーの相馬くんがステージに出る。

 拍手と歓声が上がって、スポットライトが眩しく照らす。

「どうも! 『Sky Blue and Summer』と言います! 適当に略称を考えてください!」

 と、相馬くんが笑いを誘う。

 最初はカバーした曲が始まった。とてもかっこいい曲が流れてきた。

 わたしは練習の成果が出てきた。

 悠真とのツインボーカルは、とても楽しくて、いつもよりも声が出ている。

 そして、オリジナルソングを歌った。

 曲は最高潮に達して、すごかった。

 悠真との歌声が重なって、きれいにハーモニーが作られていたの。

 そのステージが終わり、ステージ裏でみんながホッとした表情を浮かべていた。

 まだ、初日なのに、軽音楽部のライブは反響がありすぎたみたいで、二日目と後夜祭でも同じ曲を演奏をした。

 悠真がとてもかっこよくて、その表情が好きだった。

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