病み系短編集

都稀乃 泪

手首の段差

首の内側を走る血管は弱々しく脈をうっていた。

学生の頃、走ったあとに手首に指を当てて感じた脈拍とは全く違った。

ここ最近、何も食べていないからかもしれない。


一昨日、この辛さから逃れたくて手首にカッターナイフの刃を当てた。しかし、この生がここで終わってしまうと考えると、少し虚しさのようなものを感じた。

何も無い人生だった。それなのに、何を感傷に浸っているのだろうかと。

何も食べていないからか、命を奪うことを躊躇したからか、手には力が入らなかった。


結局、この自殺未遂もただ手首の皮を切って終わった。

目をチラリと左手首に向ける。血はもう止まっていたけれど、皮はまだくっついていなかったため、少し糸くずのようなものがくっついているのが気になった。


さすろうとするも、右腕が重い。持ち上げるのも億劫だ。


ようやく持ち上げて触った左手首は脈を探すのも一苦労で、傷をさすると少し段差が感じられた。

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