僕と君の日常
クロバンズ
第1話
夏休み。
それは日々の学校生活から解放され、自由を謳歌する最高の自由期間。
ある者は旅行に行ったり、ある者は家でゴロゴロしたり、過ごし方は人それぞれである。
そんな中、彼は制服を着て学校からの帰宅路を歩いていた。
「はぁ……暑い。なんで夏休みに補習なんていかないといけないんだ」
額に汗を浮かばせながら、川北勇はそんな愚痴を漏らす。
彼が何故夏休みに学校へ行っていたのか。
それは単純な話、成績指導だ。
勇は前回のテストで赤点を取ってしまい、その為の補習を終えて帰宅路を歩いていたのである。
「……努力はしてるんだけどなあ」
中々結果には繋がらない。
自分はやはり要領が悪いのだろうか。
そんな事を考えながら、住宅街のとある路地を進んでいく。
何もない道だ。車も通っていない。
勇が住んでいる地域は都心からすれば田舎の部類に入るが、ここまで人気がないのも珍しい。
「まあ夏休みだしなぁ」
皆どこかへ遊びにでも行っているのだろう。
勇にはこれといって夏休みの予定はなかった。
悲しくも、いや幸いにも夏休みを共に遊びに誘ってれるような友人もいない。
というか友達自体一人もいない。
ただ家に帰ってゲームや漫画等、娯楽を一人で楽しむのみだ。
「はぁ……。なんか面白いことでも起きないかな〜」
勇がそう呟いたその直後だった。
彼が"ソレ"と出会ったのは。
「ッ!?」
突如勇の足が何かにつまづく。
そのままバランスを崩し、上体から地面に転倒する。
「うわっ!」
『〜〜!』
その時。勇には自分以外の声のようなものが聞こえた。
掌に痛みを感じながら慌てて背後を確認する。
やはり何もない。
「……え」
だが、一つ違和感があった。
それは、自分の足が宙に浮いている事。
まるで何かの上に乗っかっているかのように。
「——ッ!」
徐々に何もないはずの背後に色が着色されていく。
今まで透明だったその場所から、少しずつ何かが浮かび上がっている。
「……!?」
勇はその光景に言葉を失った。
何もなかったはずの自分の足元に、人型の何かが横になって倒れていたのだ。
倒れたまま姿勢のまま硬直する勇の足を退け、その生物はゆっくり立ち上がる。
「——」
灰色の肌に大きな目。頭には一本の触覚のようなものを生やした生物。
それは特殊メイクなんてものではない、明らかに人外な容貌をしていた。
まるでアニメや漫画に出てくるグレイ星人のような姿に驚きを隠せない。
その生物は勇の瞳をじっと見つめてくる。
「…………」
見つめ合うこと数秒。
勇はその生物と互いに硬直したまま動けずにいると。
「……!?」
その生物は一歩仰け反り、こちらに心底驚いたような反応を見せる。
(な、なんだ?)
立ち上がる事も忘れて勇は心の中でそう呟いた。
お互いに驚愕の表情を浮かべる中、その生物は口を開いた。
「な、なんデ……」
お互いに驚愕の表情を浮かべる中、その生物は口を開いた。
「なぜ私が見えていル!?」
「……し」
発音がぎこちない日本語。
だが目の前の生物は確かに、日本語を発した。
「喋ったぁぁぁぁ!」
絶叫が周囲に響き渡った。
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