S12.6 北森桃風香の自宅招待 7月25日
――朱鷺森市 萩野神社裏山:山道入口 PM13:30――
桃風香「ゆーが君!こっちこっちー!」
幽雅「はぁ……すいません。運動不足が……」
桃風香「ほら、もうちょっとだよ!」
▶桃風香は幽雅の手を引くよ
幽雅「ありがとうございます……」
▶段々舗装された道を離れ、30分程茂みの中を進んでいくと、木に囲まれている開けた場所にたどり着きます。ツリーハウスのようになっており、庭には手製と見られる木製の家具などがあります。近くに洞窟のような場所もありますね
桃風香「とうちゃーく!」
幽雅「はぁ……ふぅ……これは、すごいですね……」
桃風香「でしょ? テーブルとかいすとかも、自分で作ったんだよー」
幽雅「すごいですね……北森さんは」
桃風香「えへへー、ありがとう!じゃあイスに座ってて、準備するから!」
幽雅「はい。楽しみに待ってますね」
▶桃風香は小走りで木の陰に向かうと、木皿の上に何か湯毛があるものを乗せて戻ってきます
桃風香「えっとね……、ボククッキー焼いてきたんだ。食べよ!」
幽雅「そうですか。北森さんはなんでも一人で出来てすごいですね。僕は、あまりそういうのは得意じゃないので、憧れてしまいます」
桃風香「ゆーが君お料理興味あるの?」
幽雅「お料理……というわけではないですが、そうやってなんでも一人で考えて、一人で出来るって言うことを僕は今までできなかったので」
桃風香「そうなんだ……。ボクも昔はあんまり得意じゃなかったんだけど、ずっと一人でやってるとその内色々出来るようになるもんだよー」
幽雅「僕の家は全て母様が決めてたから。今だって北森さんに凄いって言うくらいしか、褒め言葉が思い浮かばないんだ」
桃風香「そうなんだ……。ゆーが君のお母さんってどんな人?」
幽雅「良い人だよ。僕をいい学校に行かせたくて毎日頑張ってるんだ」
桃風香「いい学校……。頭のいい学校ってこと?」
幽雅「そうだよ。将来を苦労しないようにって。――――北森さんは違うの?」
桃風香「ボクは……、んー……ゆーが君と一緒の学校が良いな!そうしたら、ゆーが君と長く一緒に居られるしね」
幽雅「そうですか。なら、小学校のテストくらいは100点取らないとですね。僕が教えてあげますよ」
桃風香「良いの?ありがとーゆーが君!」
▶桃風香は正面から飛び込むように抱きつこうとしますが、幽雅は軽く受け流すように押し払います
幽雅「すいません。抱きつくのはこのはさんが嫌がりますので」
幽雅「これで、許して下さいね」
▶幽雅は頬に優しくキスします。桃風香は顔を真っ赤にさせます
桃風香「ふぇっ!?ゆ、ゆーが君!?」
幽雅「じゃあ勉強教えますよ。何の教科が苦手なんですか?」
桃風香「ま、待って待って!今のって……キス?って言うんでしょ?」
幽雅「はい。もみじさんが親愛なる人にするんだって言ってました」
桃風香「親愛なる人……?」
幽雅「ええ。北森さんは大切な僕の友人ですので」
桃風香「そ、そうなの?キスって、好きな人とするって書いてあったような……」
幽雅「そうなんですか?北森さんの言うことですしあんまり信用はできないですね……」
桃風香「うん、喫茶店に置いてある本にそんなこと書いてたよー」
幽雅「まあ僕が北森さんのことを好きなのは間違っていませんし、大丈夫だと思いましょう……」
桃風香「――う、うん。……あれ?そういえば何で抱きつくとこのはちゃんが嫌がるの?」
幽雅「さぁ……?もやもやするって嫌がられてしまったので、やらないようにしてるんです」
桃風香「ゆーが君は………ボクに抱きつかれるの嫌……?」
幽雅「嫌……、ではないですが、このはさんに言われたので。すいません」
桃風香「ゆーが君は嫌じゃないけど、このはちゃんが嫌がるから抱きついちゃだめ……ってこと?」
幽雅「そういうことになるのかな……。ごめんね」
桃風香「ゆーが君はどうしたいの?」
幽雅「このはさんと約束したことを破れませんよ。破れっていうのなら、すいませんが北森さんとはこれきりです」
桃風香「違うよ。ゆーが君がどうしたいのか知りたいだけ」
幽雅「約束を守りたいだけですよ」
桃風香「じゃあ、このはちゃんがボクと遊ばないで欲しいって言ったら、このはちゃんと会わないで欲しいって言ったら、それも守るの?」
幽雅「守れない約束なんてしませんよ。それに、――お願いと脅迫は違いますよ。北森さん。……勉強しないのなら、僕は帰ります。僕は約束を破りたくはないですからね」
桃風香「――ううん、ごめん。ボクの勘違いだったみたい。うん!教えて!」
幽雅「はい。それで、どれが苦手なんですか……?」
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