S09.2 綾瀬ことりの抜け駆け 6月13日
――朱鷺森市 朱鷺森病院:病室――
ことり「失礼しまーす」
秋夜「ああ……って綾瀬。お見舞いか?嬉しいよ」
ことり「うん。あっ、ゼリーここに置いておくね。具合はどう?」
秋夜「ああ。身体の方はかなり動かせるようになってきたかな。綾瀬はどうだ?勉強大丈夫なのか……?中間近いだろ……?」
ことり「そりゃよかった。――中間。中間……。うーん、うん、まあ、大丈夫、かな?」
秋夜「おいおい……玲海とか花恋とか成績いいんだから教えてもらえよ。俺も国語と社会ならまだ行けるからよ」
ことり「はい……、お世話になります……」
看護師「萩野さーん。車椅子で外出しましょうかー!」
秋夜「おっとわりい。今からリハビリなんだったわ」
ことり「ん、じゃあ出直したほうがいいかな?」
看護師「あんら~彼女さん?わたしみたいなおばちゃんじゃなくて彼女さんと行ったほうがいいわよんねぇ!!車椅子、ここに置いとくから!3時間後には帰ってくるのよんよぅ!」
秋夜「い、いや。違うような違わないような……って行ってしまわれた……」
ことり「あええ……行動がお早い……」
秋夜「――すまん。綾瀬、身体起こすの手伝ってもらえるか?」
ことり「あ、うん」
▶綾瀬 天運
失敗
▶抱き上げる時に、前から抱きついてしまいます
秋夜「い、いやその……抱き上げるって……。そうじゃなくて……、腰あげてくれるだけで良いというか……僥倖というか……胸あたってるというか……」
ことり「えっ、あっ、うん。しかもあれだね、とても持ち上がりそうにない……」
秋夜「ちょっと……ちょっとだけでいいから……離れてくれ……すー……はー……」
秋夜「すまん……こう腰を後ろに引く感じで上げてくれ。――できるだけ後ろから……」
ことり「わかった」
秋夜「悪い。助かった……。車椅子、こっち持ってきてくれるか?」
ことり「うん」
秋夜「よし。押して中庭まで頼む。中庭につけば自由にしていいらしいからさ」
――朱鷺森市 朱鷺森病院:中庭――
秋夜「この辺で止めてくれ。――――すまんな。付き合わせてしまってよ」
ことり「いや、まあ、心配だしね。それに私を庇ってって言うのもあるし……」
秋夜「あれは俺の失敗だろ。綾瀬は気に病むことないって。それに、俺達は奥義を身につけたからな!」
ことり「奥義?俺たち?」
秋夜「ああ。花恋が神楽舞してる時だけ、見てる光景を俺や玲海と同期させることが出来るようになったんだ。夜叉としての力らしい。もみじさんのおかげで、俺や花恋、玲海も夜叉として特訓してるんだ。花恋を通して、こないだのも俺はしっかり見たんだぜ」
ことり「このあいだ?」
秋夜「ああ。なんでも俺達の高校に転校生が来たらしいじゃないか。綾瀬は知ってるか?」
ことり「へぇ……、知らなかった。同じ学年?」
秋夜「いや、顔が幼いから多分年下だなぁ。かっこいい和服来てな、弓で射抜いてたんだ」
秋夜「棗さんとかとも一緒だったし、綾瀬もそのうち会えるんじゃないか?」
ことり「おおー、マジか。楽しみにしてよ」
秋夜「そ、そそれで……、なんだけどさ」
ことり「うん?」
秋夜「自分の視線を他人の視線で合わせるのはどうやらうちの家系直伝奥義なんだ。力のある人が相手なら誰でも俺と同期出来るんだよ……。で、な」
ことり「うん」
秋夜「ええとその……だな。同期するための方法が……だな……ええと、その」
ことり「うん」
秋夜「その、見たい相手からのキ、キス……してもらわないとダメで……な……。そ、その……だな」
ことり「うん……」
秋夜「キスしてください……お願いします……」
ことり「お、おう……。――――ん?じゃあこの間も誰かとしたの?」
秋夜「ああ……。花恋がうちの秘蔵書持ち出してきてな。実験ってことらしい。成功したのは間違いないから正しいんだろうが……」
秋夜「あああああああなんでこんな条件にしたんだよおおおお俺の祖父ちゃんんんんたらしかよおおおおおお」
ことり「え、キスってどの程度のキスなの。」
秋夜「え、えっとな…………20秒…………。舌も入れて…………」
秋夜「なんでだよおおおおお頭おかしいのかよおおおおおハードルたけえよおおおお」
ことり 「おおう……ガッツリ……」
秋夜「ということなんです…………。お願い、出来ますでしょうか」
ことり「えっと……。えっごめん突然すぎてちょっと。あの」
ことり「ちょっとだけ、気持ちの整理をつけさせて……」
秋夜「いやほんとごめん。本が嘘だったかもしれないし……。ひ、引かれなくてよかった……」
ことり「――でも秋夜くんは、ほかの人とすでにしてるんだよね」
秋夜「え、えっと……、利害の一致で……」
ことり「あれ?じゃあ利害が一致すればだれとでもするの?」
秋夜「いや……。花恋のときは不意打ちだったし、綾瀬にしかこんなこと言わないって」
ことり「それはそれでまたなんか……。――よし。……よし……」
秋夜「俺の心身生命にかけて綾瀬以外の人とこの先キスしない……!約束する……。というより花恋入れても2回目だし……」
ことり「いやだからそれがなんというかなんか……」
秋夜「いやだって……誠意っていうのをどう伝えていいかわからないんだよ……」
ことり「うん……うん……痛いほど伝わってる……」
ことり「――――よし、しよう。あれまって、ここで?」
秋夜「い、いや……。そ、そのつもりで覚悟決めてきたんだけど……」
ことり「いや、覚悟が揺らぐ前にしておきたいのはやまやまなんだけど……。こう、人通りとかがちょっと……」
秋夜「だ、誰も見てないはず……。だから」
綾瀬「う、うんそうだよね。それに20秒だし……、20秒……。20秒かあ……」
秋夜「実は花恋の嘘で20秒じゃなかったりするかも……。俺秘蔵書読めてないし……」
ことり「それは、あんまりする前に聞きたい話じゃなかったかも……」
秋夜「ごめん……」
ことり「いや、考えてても仕方ない……。とりあえず20秒で成功したんならやろう……。やるぞ私……」
▶ことりは秋夜の頬に手を添えてキスしました
秋夜「っん……、ぷはぁ……。はぁ……。綾瀬、俺の車椅子を後ろに向けてくれるか?」
ことり「……うん」
▶ことりは後ろの光景もぼんやりとわかるようになっています
ことり「お、おお……。すごい」
秋夜「これで、どこでもやろうと思えば俺の目からの景色を同期させることが出来るらしい。――――最も、俺から綾瀬に同期させるってのは出来ないみたいだけど」
ことり「な、なるほど」
秋夜「めっちゃ恥ずかしい……」
ことり「ちなみにこっちから見てる時って、そっちにも、こう、わかるの?」
秋夜「ああ。花恋によるとそうらしい。あいつ、俺や玲海が頑張って覚えた能力パクってるから」
ことり「なるほど……」
ことり「あれ、花恋ってもしかしなくてもすごい?」
秋夜「すごいな。踊る必要はあるみたいだが他人が苦労した能力全パクリ出来るらしいぜ。チートかよ」
ことり「お、おおう……。住んでる次元が違う……」
秋夜「そ、その……。キ、キスしたことは内緒な……。思い出すだけですっげー恥ずかしい……。――――でもすっげー気持ちよかった……」
ことり「え?あ、うん。はい……」
秋夜「じゃあそろそろ戻ろうか……はぁぁぁぁ……」
綾瀬「うん……。はぁ……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます