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この季節になると、田舎に住んでいた祖母のことを思い出す。

祖母はとにかく優しかった。

結構な距離があるため、1年に1度しか行けなかったのだが、毎年泊まりに行く度に、それはもうとてもよくしてくれた。

僕の名前を、子守唄でも歌うかのように弱々しく呼ぶ声を未だに鮮明に覚えている。

決して体は強くなかったが、山へ虫取りに行く時も、1人では心配だからと、いつも後ろを付いてきてくれていた。

そんな祖母が大好きだった。

だからだろうか。

祖母の死に際の場面が、脳裏にこびりついている。

祖母は、太陽の光がさんさんと照りつける真夏の昼下がりに突然倒れ、偶然祖母の家を訪問した近隣住民の連絡で、病院に搬送されたらしい。

幸い一命は取り留めたが、危篤であることは変わらず、僕ら家族はすぐに祖母の元へと向かった。

そこで見た光景は、まだ幼かった僕にかなりのショックを与えた。

大量のチューブで繋がれた体に自由などなく、そこかしこに生命維持装置が取り付けられていた。

父が祖母に呼びかけると、祖母は微かに目元を緩ませた。

当時の僕には、そんな小さな感情の機微の意味など分からず、ただ呆然と立ち尽くしていた。

そして、僕らの顔を見て安心したのか、そのまま静かに息を引き取った。

父は祖母に覆いかぶさって、「せめて最後に声が聞きたかった」と小さく呟きながら泣いていた。

母もそんな父の心中を察してか、何も言わずに父の背中を見守っていた、

僕は?どうしていただろうか?

覚えていないということは、何もしていなかったということなのだろうか。

それは恐らく、違う。

自分は、不思議な体験をした、と記憶している。

詳しくは覚えていない理由は何故か分からない。

時折ふと思い出すのに、思い出そうとしたら思い出せない。

そう、確か、祖母の体から何かが微かに抜けていくのが見えたんだ。

そしてその不可視の煙は僕らの周りを取り囲んで、優しく包み込んだ。

声が聞こえた気がした。

「ありがとう」

僕が靄がかった意識のなかから目を覚ますと、その煙はどこかへ消えてしまっていた。

そうだ、それで僕はこう言ったんだ、何故だかは分からないけど。

「ごめんね。おばあちゃん。」



――――――――――――――――――――


深い意味があるかのような終わり方をしていますが、特に意味はありません。

僕の書き手としての技量が足りませんでした。悲しい。

それと、そろそろ物語を書いてみようかと考えています。しっかりとした、ストーリーを描く書き物です。

頑張りマッスル。

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