ヒノモトダンジ
夏冬春秋
Ignition
時は2100と云十年、この年もニュースは多かった。百年以上前から変わらないように、物騒な殺人やら強盗やらの事件だったり、どっかの国で政変が起こったりしたとか、新たに国が独立しただとか。とにかくニュースが多かった。
そんな中で一際目をひいたのが、とある国に関するものだった。まぁそれがさっき言った新たな独立国なんだけど、それはひとまず置いといて、その国が世界中にとある宣言をしたわけだ。とあることに関するとあるスピーチと共に、とある宣言を行った。それがバカみたいに話題になった。
うっわー。すっげぇアバウト。まいっか。
んで、“とある”の答え合わせをするとだな、今から百年近く前ヨーロッパの南側、イタリアにあるエトナ火山が大噴火を起こした。それによりイタリアはほとんど崩壊。近隣の国々にも影響を及ぼし、火砕流などの影響で新たな島が出来るほどだった。それこそが現在のヴェスカルロ帝国。僕が暮らす国。
そんな小さな島国がした宣言っていうのが、『永世無干渉』。要するに「こっちはあんたらに関わらないから、その代わりあんたらもこっちに関わるな」ってこと。
意味わかんないって感じだけど、ホントその通り。他国との貿易も一切しません。旅行客も受け付けません。国民を外に出す気はありませんってことだから。正直国民が一番びっくりしてたよ。うちのじいちゃんなんか、食ってたモンじゃなくて入れ歯喉に詰まらせて白眼ひんむいたまま行っちまった。もちろん病院だけど。
でも、その宣言の内容で何が一番やばいって、それは最後の項目なんだけどさ、紹介するにはあまりにもアレだからちょっとポップに言うことにする。
『もしなんか関わっちまったらよォ~~~っ。マジにケンカふっかけるっすよォ~』
て感じ。
あぁー。もうめんどくさいから一気に説明するね。
とにかく!なんやかんやあって、ある程度発展を遂げたこの国では軍事産業やら、争いごとに関わることに力を注いでいる。理由としては世界中の人間がうすうす感づいていることだと思うけど、国家間のギスギスが激化している感じがする。
きっかけさえあれば大爆発を起こすだろう。
てことで、若いうちから素養をつけるという意味でギムナジウムを国中に配置。そして、ヴェスカルロの特殊技術を用いた人型巨大兵器。通称ベルセルク。どっかの国の言葉で無法者、とかそういう意味だった。
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「やっぱめんどくさいなぁ」
持っていたペンを机の端に転がして、机に置いていた手記をやや乱暴に閉じる。どうにもこういう書く作業っていうのは僕には向かないようで、ため息みたいに独り言をはき出した。ほんの少ししか書いちゃいないのに、なんだか一日分の疲れが襲ってきている感じだった。僕、文系のはずなんだけど。
椅子に思いっきりもたれかかりながら、思いっきり伸びをした。体中から小さくポキポキ音が鳴っているのが分かった。それから、ずれたメガネをちょっと上に押しこんだ。
あいつに頼まれたからこうやって綴っている訳なんだけど、こんな話誰が読むんだよ。明日はようやくギムナジウムの卒業式だっていうのに、僕は一人、真夜中に何でこんなモノを書かなくちゃいけないんだよ。
倒れ込んだ僕の上半身、というか頭は手記を軽く頭突いた。
そうだよな。でも書かないといけないんだもんな。どんだけ時間がかかろうとも、これだけは書かなくちゃいけないよな。あいつのため、だもんな。
とはいっても、明日は明日で大事だし。早く寝たいし。
始まりだけでも書いておくか。
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あれは二年前。四月の頃だった。
あの日はいつもよりもうるさくって、ちょっとイラッとしたりして、熱くって、輝いていて、そしてなにより、全てが始まった日。
そんな一日が、というか一日でそんなに、たった一人の転校生によって巻き起こされた。巻き起こった嵐はいつしか全てを飲み込んで、全てを変えていく。
ただ、あのときの僕には。僕たちには。彼にさえ、分からなかった。
これから動く運命のことなんて、誰にも分かるはずがなかった。
この手記は、僕たちの戦いを綴ったモノだ。そして、彼の炎を、彼の希望を伝播させる小さな小さな電波塔である。
ある人は彼をこう呼ぶことから、僕はこの手記のタイトルをこう名付ける。
“ヒノモトダンジ”
それが、この物語の全てである。
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