自転車

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自転車

 自転車は様々な進化をしてきた。最初に作られたものは今の自転車のペダルが無い形のもので、立ちこぎしかできないものだったし、レース用に作られたものは前輪が極端に大きいものだった。日本においても自転車に目をつけて商いをしたものもいた。

 日本人が着物を脱ぎ始めてから間もない時に、ある貿易会社が変わった自転車を売り出そうとした。馬車や人力車に取って変わるものだからってことで大々的に売り出そうと会社に客を集めた。広い会場にはスーツを着た男の人が集まっており、着物を着る人は数えるほどだった。壇上にパリッとしたスーツを着た男とその後ろに覆いをかぶせられた何かがあった。

 「皆様、本日はお足元の悪い中わが社の新商品発表会にお集まりいただき誠にありがとうございます。ここにお集まりいただいたお客様はここにいらっしゃるまでに人力車や馬車、はたまた徒歩で、いらした方も折られると思いますが、これからの時代にはわが社の自転車が世を席巻するでしょう。外国から取り寄せた自転車を日本に合うように改造しました。こちらが、わが社の自転車です」

覆いを取り去るとそこに現れたのは一台に自転車に足が生えたものだった。

 「特殊な技術で飛脚の足を取り付けましたので坂道も泥道も川の中まで通れるのです」

その自転車は跳ぶように売れた。

 しばらくしたのちに会社に苦情を言いにお客が押し寄せた。皆、顔を真っ赤にしながら同じことを言った。

 「おたくの自転車はひどいものだ。速く目的地に行けたのはいいが、足裏が怪我して病気になって切断せざるを得なくなっちまったじゃないか。この責任、どうしてくれるんだ」

それを聞いた社長は言った。

 「足がはやくてもうしわけない」


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