66話:ポリス組織『アマノジャク』の幹部を追え! その1

 闘技場での戦いを終え、俺とルナ先輩は控え室から布袋で目隠しされた状態のまま馬車で運ばれて外へと放り出された。辺りを見回すとここは廃墟街の1区画のようだ。闘技場に居たアマノジャクの幹部の男は、今頃どのような死に方をしているのだろうか? リリィ先輩とロッソ先輩がきっと俺の代わりに、ゴルドデュエルベアや、薬漬けにされていったモンスター達の仇を討ち取ってくれているだろうか。


「俺、あのままアマノジャクの幹部にめがけて銃を撃ちたかったです……」


 そう悔しさと歯がゆさを隠さずにルナ先輩に思いをぶつけて打ち明けた。すると。


「今はリリィちゃんとロッソちゃんに任せるしかないわ。私達はいまどこに居るのかも分らない状況でまた闘技場に向かうのは得策じゃないとおもうの」

「…………」

「あの場所でサトナカちゃんを止めて正解だったと私は思っているわ。何も言葉をかけなかったらきっと。あなたの言うとおりにあの場所であなたは騒ぎを起こしていたに違いないわ」

「分っていたんですねルナ先輩……」

「何人と出会い何人と死に別れていったか。私の今までの経験してきた人生と積み上げてきたキャリアからよく似た子の事を思い出してね。それがサトナカちゃんと重ね合わせて見えちゃったからかしら」

「どんな人だったのですか?」


 そうルナ先輩に聞いてみると。


「ごめんなさい。いまはまだサトナカちゃんには言えない事だわ。つい最近の事だし気持ちの整理がついてない所もあるから。でも1つだけ言える事があるわ。あの時のサトナカちゃんはモンスターに対する強い情を感じたわ。その子と似たようなところがあったから。それで話をしたわけなのよ」


 ルナ先輩の頭の中に浮かんでいるその人と自分が似ていらしい。


「正義感は時に自分を死に急ぐ為の大義名分に変化することもあるの。だからサトナカちゃん。モンスターを愛しすぎるあまりに死なないで頂戴ね?」

「……ルナ先輩」


 寂しさ、悲哀、悲愴の感情がルナ先輩の表情に浮かび上がっている。


 じゃあ、どうすれば俺の思う正義が実現できるのだ? モンスターだって自然の中で生きている。それを人間の身勝手な欲望で汚してはいけないだろう! 俺はそういった悪を振りまく奴らに今すぐにでも正義の鉄槌を振り下ろしたいんだ……!! 


――サンデー、ホワイエット、サビの笑顔を守る為にも。俺の正義を貫き通したいんだ……!!


「ごめんなさいルナ先輩。俺、やっぱりルナ先輩のように冷静にはいられそうにないです」


 俺はその場で振り返り。自分の直感を信じて闘技場があると思われる方角へに向かって走り出した。背後からルナ先輩の叫ぶ声が聞こえてくる。その言葉を耳にすることなく俺は突っ走っていく。


「狙うはあの男だ……!」


 俺だってやれるんだ。やれるところをルナ先輩に見せつければ納得してくれるはずだ。自分の正義を貫きたいんだ……!!


 自分の気持ちに嘘をつかず、俺はアマノジャクの幹部を自分の手で暗殺することを決意した。

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