7話:初見殺し
「本で見たとおり……カエルみたいな顔してるな……」
本のに書かれている絵とそっくりだ。奇怪な姿をしているな。
羊の角が生えたカエルの顔立ち、赤と黄が混色したまだら模様の翼に。二本足でどっしりと地面を立つその姿はファンタジーに出てくるワイバーンそのものだ。
『ぎゅるる……?』
「いぃっ!?」
クリッとした黒目がこちらを向くと、グレゴールワイバーンがはて?といった感じに鳴き声を上げた。俺が茂みに隠れていることに気づいたみたいだ。なんでバレたんだよっ!?
俺を見つけるなりグレゴールワイバーンがズシッ、ズシッ、とこちらに向かって歩み寄ってくる。その行動が確信へと繋がっていく。これは不味い……!
「場所が悪すぎるなこれは……」
茂みを出れば広いリング状のスペースがある。しかし背後は細道でスペースが限られており、直線的に走ることしか出来ず逃げる為の手段が限られている。
「とっ、とりあえず見つかったなら逃げるしか――」
――ツルン。
「うひぃっ!?」
逃げようと思った次の瞬間。グレゴールワイバーンの口元から見えていたフォレストディアーの片足が中と飲込まれるのを目の当りにして思わず。
「うぅぁああああああああああっ!!」
恐怖のあまり叫び、俺はなりふり構わず猛ダッシュで背を向けて走りだした。
『グェエエ!!』
「ひぃいいいい!!」
背後からグレゴールワイバーンの叫ぶ声が聞こえてくる。そして。
――シュッ!
「へっ?――いだっ!?」
なにか柔らかくて太いロープ状の物で片足を絡められる感触と共に、宙に浮く感覚。いったい俺の身に何が起きたんだ……!? 前のめりに転倒したおかげで鼻から血が出てており、顔面が特にもの凄く痛くてたまらない……。
「うぇええええええええええええええええ!? なんじゃこりゃああああああああ!!!?」
全身がどういうことか粘液塗れになっていて驚愕する。
『ギュウルルゥ!』
「気持ち悪すぎぃ!」
驚くのもつかの間。冷静さを何とか取り戻して判断する。
「なるほどな……。逃げようと思ったらあいつの舌で右足を絡め取られてしまって。そのついでにデバフ効果で全身が粘液まみれになってしまったのか。ヌルヌルしていて気持ちが悪い……」
さらにシュゥと音と共に饐えた鉄の臭いが鼻腔をついてきたことで、それだけでは終わらない事に気がつき。
「防具から白い煙が……!」
ある程度の攻撃でも耐えることの出来る青銅製の防具から発煙現象が起きている。インナーや地肌には別状問題は無いな。防具が粘液から守ってくれているかもしれないが……。
「酸性、いやアルカリ性の唾液なのか!?」
と推察していると。地面がヌッと暗くなり。
『グワァッ!』
「うぁああああ」
後ろを振り向くと、俺に顔を覗かせてグレゴールワイバーンが口を開けて襲い掛かってきた。直感的に食べられると感じ、俺はすかさず銃を構えて引き金を引いて応戦した。避けるのに間に合わないと思ったからだ。大人しく食べられるくらいなら一矢報いろうと考えての行動だ。
――ダンッ!
『ギョェッ!?』
「くらえぇ!!」
――ダンッ! カシュッ! ダンッ! カシュッ!
目の前の恐怖に震えながらもボルトハンドルを引いては引き金を引く動作を続けていく。
『グェ、グェ、グェ!?』
突然捕食しようと思った相手に反撃の一撃を受けたことで驚愕し、その場で飛び跳ねた後に横倒しに倒れたグレゴールワイバーンは、足をばたつかせながら背を向けて後ろへと下がって俺との間合いを取り始めた。
「くっ!」
俺はすかさず起き上がり。
「撤退しよう……!」
奴がパニック状態に陥ってその場で暴れている。捕食対象からキツイ反撃を受けたことで奴はどうすれば良いか分らずに混乱状態にあるようだ。
「いける……!」
チャンスを感じ、俺は急いで来た道を戻る為を考えて。
「これでもくらいやがれ!」
俺はポーチからボール状のアイテムである『
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