大人の事情
こんなにも余韻を残したままで、
何も手につかない。
ため息ばっかり漏れて、
仕方ないわね。
貴方も私も、同じように時を重ねて、
あの頃付けていたネックレスが好きだったのに、
今ではそれは健康器具に代わり、
臭いタバコの臭いが好きだったのに、
今ではそれは何の臭いもしない唯の煙りに代わり、
そんなに健康志向だったかしら?
立派なオジサンね。
それなのに、気持ちはあの頃のままなんて、
残酷ね。
私も立派なオバサンなのに、
消えない余韻のやり場に困るわ。
分かって欲しい。
時は過ぎて、色もあせて行く。
志向も変わる。
目に見える全ての物は姿を変えていくのに。
それなのに、求めるものに変わりはなくて、
気持ちだけは若いまま。
あの頃と違うのは、
姿形だけじゃなく、こんなにも長く留まる余韻。
知らなかった。
こんな素敵な時間がある事を。
何も手につかず、ため息だけが漏れる時間が、
こんなにも甘く切なく、だけども強く尊いなんて。
二人で重ねた時間の重み。
あの頃には、知り得なかった深み。
余韻の中でも、幸せを感じる事ができる。
大人には、大人の、事情があるの。
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