感傷もしくは官能的な…

アノマロカリス・m・カナデンシス

その指先で

あの頃のような純粋さは、もうない。

もう、花びらは落ちかけて、私が咲いていた時期は、もうじき終わる。


こんな歳になって尚、まだ咲いていたいと思うのは、滑稽でしょうか?


あなたを、こんなにも、想う。

ただ、その指先で、私に触れて欲しい。


純粋だったあの頃には無かった。

あなたに触れて欲しい、と想う気持ち。


落ちかけた花びらを、その想いだけで保つの。

香りを発し、あなたを誘うけど、その香りも弱い。


あなたが私に触れた時、

あなたはどんな顔をするかしら。


あなたのその指先は、声は、

私のものにはならないかしら。


私の弱った香りに、

あなたの香りを重ねてくれないかしら。


あなたが発する香りが、私を誘うのに。

それなのに、

その指先で触れることもしてくれない。


ふたつの香りは交ざりあい、

不純な想いを包み込む。

きっと素敵な香りがする。


ただその指先で、私に触れて欲しい。


この花が、美しかったと、気付くはず。


 

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