センターの夏休み

星空 連

プロローグ

第1話 夏の始まり

7月中旬


地球温暖化のせいなのか分からないが、とにかく暑い

日本全体が暑いだろうが、この坂は特に暑い


「はぁ…なんでわざわざこの坂を登らないといけないんだ…」


ブレザー姿にカバンを持ち、歩道を歩く1人の少年

汗を流し、溜め息を吐き、坂の上へ登る


そして、交差点に出る

信号が変わると止まっていた自動車が動く

田舎ではあるが、関東地区なので都市機能はしっかりとあり、周りには木々が沢山あるが、道路もコンビニもある


暑いせいで頭が混乱しているのか、変な説明を誰かにしている...

だとしたら集中しないと...


「……この交差点を超えれば…見えるか」



交差点の向こうを見ると、少なくともあと2つ横断歩道を歩かなければなさそうだ

最初から右の歩道を歩けば良かったな

さらにそこから入り口までは約3分。

あと3分もこの暑い空間を歩かないといけないのか

…歩くしかないのだけどな

まぁそんなこんなで着いた。

市立教育センター……いや、元市立教育センター所だな


今は使われていないが、何故か電気が通っており、水も教室等もある

元々は小学校が教育センターになって、今は使われてない

そんなセンターの敷地内に入る

ここは職員室だけ鍵が空いているのだ

誰か出入りしているのかは分からないが、そこから入り職員室にあった鍵を取る


「……そういえば、靴…あったな」


職員室に入る前に、靴が1足あった

誰かがいる……?


「……誰がいるんだ…はぁ…」


正面の玄関口の鍵を開け、オープンする

そして、靴から上履きに履き替え、2階にある大広間へと向かう


大広間には教室道具一式に、畳のエリアや、話し合えるような場所が全部1部屋にした部屋で、まぁ……溜まり場だな


「……階段を上がってすぐ左…開いてる……」


ドアに手を掛けたら何故か鍵が開いていた

どうやら勝手に入った犯人はこの教室にいるようだ


恐る恐るドアを開ける

すると、風が俺の黒髪を浮かせる

そして、教室の窓付近に置いてある本棚に、一人の少女が窓から上を見上げるように空を見ていた


その少女は、透き通った長い金髪をなびかせ、暑い空を見上げる。

そして、俺に気付いたのか、そっとこっちを振り向いて、呟いた


「……おはよう。あかつき君」


その天使の笑顔を見た俺は、その子に一目惚れした

こんな事は初めて……だろうか……




__________



「…」


「…」


二人きりの状況で、二人とも無言になる

別に、何か話してみたいとかじゃないが

でも何か話した方が良いかもしれないと頭の中で考える


(……どうするか…)


すると、少女から先に口を開く



「ねぇ」


「……なんですか」


「暁君でしょ?絵のコンクールで入選したりして、色んな才能を持っている高校生って」


「……まぁ…そうですね…」


「……コンクール、良い絵だったよ。本当に夏の空みたいで、良かった…」


「…そう…ですか」


溜め息混じりにそう呟く

そして、トイレに行こうと大広間から出ようとドアに手を掛けると、いきなりドアが開く

しかし、別に驚きはしなかった


目の前に女子がいなければだが……


「……びっくりした…」


「わ、私がびっくりしたからぁ!」


大きな声で言うこの女子は新城しんじょう あかり

俺の幼馴染みで、同級生

長い黒髪に、その黒い目は決意が固まっている目だ。

そんな目が綺麗に見える

まぁ……スタイルも問題無いし、モテるっていう噂を聞いたが、

嘘っぽいんだよな



「だからいつもいつもそんなダメ男だって言われるのよっ!この間抜けが!」


「……うわぁ…いつものおかしな説教だ」


そう。この女、性格がめちゃくちゃうざいのだ

…誰だモテてるなんて情報を俺にくれた奴は

…絶対にこいつがモテる訳ないだろう…

まぁ……可愛いとは思うけど…


「おかしくないしっ!ったく…失礼しま……あの子…誰…?」


「俺もよく分からない」


「…そう」


新城はその少女の近くへと歩き進める

そして、その少女に話し掛ける


「えっと……どちら様…ですか?」


すると、その子は新城の方を向き、耳元で囁いている

…残念、名前は自分で聞けということらしい

めんどくさいな……トイレに行こう



________



トイレから帰ると、教室が賑わっていた

全員で7人……今年はそうなのか


「お、来た来た。よっ」


「…はぁ……大丈夫なのか」


「まぁまぁ……そう警戒するな。大丈夫だよ。ここにメンバー達は俺が見込んだ人達だ。実力もある。色んな才能があるよ」


そんなことを言うこの男は、神埼かんざき れん

女子の中で作られた学校内イケメンランキングで4週連続1位とかいうクラス内の王子様、らしい

短い金髪と、女子も虜にするその笑顔は反則とかなんとか言われてる人だ



「……7人か」


「ああ。しかも男が3人で、女子が4人。一人余るなぁ…」


「恋を発展したいのかお前は」


「まぁねっ」


めんどくさいな神埼の扱いは...

そんなことを考えていると、ドアがガララと開き、一人の女性が黒板の前まで歩いて言う


「みんな、席に付いてねー!あ、席は自由でいいよ?どうせ結構席余るし……2…4…6…8…10…うん。余るね」


見ただけでも分かる

結構な席がある

大きなテーブルにある席が7つ、その後ろ...2列目に個々に机があり、それを数えれば全部で13個。

そして後は3列目の席も合わせて16個なので意外と自由に座れる


そんな中、俺は一番窓側……ではなく区間が区切られているように置いてあるホワイトボード側の3列目にした

理由は簡単、窓側は暑い日射しが当たるからだ


ちなみに俺の前に神埼が。

俺の左斜め前、1列目にいる



「えーっと……うん。全員揃ってるね。ごほん……それでは、一日目。始めていきましょうっ!」


と、黒板の前で立ち、俺達に向けて言う

一日目……そう、俺達はこの使い回されたセンターで、夏休みが終わるまで、ここで夏の思い出を作らなければならない


そんな“命令”を受けたのが、この“7人”なのだ―――――



第1話 夏の始まり―――――



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