1.わからないなんてことないはずだ

1-1

俺の2周目の人生は、初期設定からちょっとおかしかった。

1周目の時と両親は同じだが、住んでいる場所はまるで違う。1周目の時は地方に住んでいたのに、2周目入ったら急に都会住みの坊ちゃんにグレードアップしてた。

しかも俺は第一子という設定らしい。1周目の俺はどこいったんだよ、と突っ込みたくなる。

ただ、1周目の俺は1984年に産まれて、2周目の俺は2001年に産まれたから、その辺の時系列はちゃんとしている。

なんだこのガバガバな設定、ゲームだったら開発段階で却下だろうな。


「俊哉」という名前は無事に1周目から引き継がれた。名前が決まった時は心底ホッとした。違う名前はごめんだ、俊哉という名前はかなり気に入っている。


赤ん坊の時は本当に大変だった。上手く喋れないし、お腹減ってもヌルいミルクかベチャベチャの離乳食しか食べられないし、手足も思うように動かないし、極めつけはオムツ。自分の尿意にここまで絶望したのは初めてだった。

だからオムツ卒業は早かった。嫌すぎたからな。夜泣きもしなかったし、親からすれば相当育てやすかっただろうな、俺。


順調に赤ん坊時代を過ごし、俺は3歳から幼稚園に通った。1周目の時の知識と記憶を綺麗に2周目に引き継いでた俺は、ちょっと知識を披露しただけで、瞬く間に「天才児」になった。

まあ普通に考えて、そこら辺にいる3歳児の可愛い男の子が急に因数分解とかやり始めたら大人は驚くよな。


なんて言っても俺は2周目の人間だ。他の子どもと良好な人間関係も簡単に築いた。まだまだ幼児は単純だからな、俺が遊んでいたおもちゃを横取りしようとしてきても、その子に他のおもちゃを提示してその面白さを伝えれば、すぐそっちに傾く。チョロいもんよ。


大人の前では可愛い可愛い子どもを演じて、信頼も簡単に勝ち取る。勉強面だけでなく、全ての面で俺は「天才児」だったのだ。

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