水滴
翠は、暗い表情を少し緩めて、茉里をほっとさせてから、話し始めた。
「まだ、私たちはあなたに話していないことがあるの」
ドリンクバーのグラスに着いた汗が、テーブルに落ちる。茉里はそれが気になったが、翠はそのグラスを握ったまま話し続けた。
「私の夫、壮太の父親の話。彼は、あなたが私たちのペンションに来る三日前に、あることをした。それは、とても悲しくつらいことだった」
グラスを持つ緑の手に力が入る。不思議と、その手に水滴はついていない。グラスを強く握った手から水滴が落ちることもなかった。
茉里がそれを不思議に思っていると、翠は一つ、大きなため息をついて、こう言った。
「茉里さん、ごめんなさい。私も壮太も、もう、この世にはいないの」
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