這い出る体

 青白い顔は、茉里が声を失ってもまだ、無表情のままだった。たすけて、そう言った唇をもう一度薄く開けて、茉里をじっと見る。

「暗いよ、寒いよ」

 青白い顔が、そう言いながら茉里に近づいてきた。床から何一つ音をたてることなく、するすると体が出てくる。その体は膨張して膨れ上がり、顔以外の全てが崩れて骨を見せていた。

「寒い、くるしい、たすけて」

 皮膚がずり落ちてむき出しになった骨をカタカタ言わせながら、青白い腕を上げて、その顔はようやく表情を得た。

 茉里はふたたび足しを掴まれ、凍えるような寒さに震えながら、恐ろしいはずのその顔を凝視した。青白い顔は、少しだけ口角を上げ、冷たい息を吐いた。

「いつか、君も僕らのなかに」

 そう言って、消えていった。

 茉里が気を失ったのは、その直後だった。


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