青白い顔
茉里は、夜中に目を覚ました。
眠れなかったわけではない。今は夏だが、部屋の空調は効いている。慣れない仕事をたくさんこなしたから疲れていた。眠れないはずがない。
しかし、茉里は目を覚ました。
少し疲れの残る体を引きずって、茉里はベッドから起きた。そして、ふと、気になって、コスメポーチの中身を見た。
翡翠のような石は、確かにそこにあった。
「気分、変えた方がいいかも」
茉里は、独り言を言って、一人部屋を出て、洗面所に向かった。そこで顔を洗えば、気分は変わるだろう。そう思って、洗面台に水をはり、顔を洗い始めた。
すると、誰かが後ろに来た気配がして、茉里は顔を洗う手を止めた。気配が消えないので、誰か他の客が来て待っているのだろうと思った。すると、突然、茉里の右足にひどく冷たいものが触れた。
「冷たい!」
思わず、声を出した。そして、そんないたずらをする客に一言言おうと、急いで顔を拭いて鏡を見た。
だが、そこには誰もいなかった。
茉里が不思議に思って周りを見渡すと、また、冷たいものが茉里の足に触れ、それは足首を強く掴んできた。びっくりして下を見ると、青白い顔が床から出てきて、その死んだ瞳が茉里を見つめた。
茉里は、一瞬訪れた恐怖心から、声が出なくなってしまい、口を押さえたまま、ただひたすらに青白い顔から目をそらして、足を掴む冷たい手を振り払おうとした。
すると、冷たい手はすぐに外れ、青白い顔だけが残った。茉里が口に手を当てて嗚咽を漏らすと、青白い顔は、無表情のままこう言った。
「たすけて」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます