第58話 政府と専門家会議の不協和音

  「専門家会議は廃止します」「新たな組織を設置します」-。

6月24日、西村康稔経済再生担当大臣は記者会見で無表情に発表ました。一方、専門家会議の尾身茂副座長は同じ時刻、別の会場で開かれていた会見で「私はそれは知りません」と述べました。私には、新型コロナウイルスの世界的な蔓延・感染拡大(パンデミック)が収束を見ない中での「チームJAPAN」の不協和音に映りました。

『これ、ガチかな? 尾身さんだけに、文字通りの“尻尾切り”かよ』

文庫本から目を上げ、テレビのニュースに集中しました。尾身副座長がカメラの前で台本通りに演技できるほど芸達者でないことは分かっているつもりでしたが。

 二人の発言の齟齬を「ヤバい」と思ったのでしょうね。政府は、尾身副座長の発言について「事務方が確認したところ、尾身氏は『西村大臣が会見をしていることは知りません』という趣旨だったと答えている」と述べ、“予防線”を張りました。まるで野党やマスコミの「ツッコミ」どころを埋めるように。


 政府の発表では、新しく発足させる有識者会議の分科会では会議の「議事録」は作らないとのこと。

 一部報道では、3月に専門家会議がまとめた見解から「無症状の人も感染させている」、「1年以上の長期戦」といった文言を政府が削除したと伝えていますから、どんなに批判の集中砲火を浴びても専門家会議の「議事録」だけは作りたくなかった政府の姿勢が明らかになりましたね。あたかも専門家会議の意向のように見せかけて…。でも、“援護射撃”を期待した専門家会議からは「別に発言者の名前がでても構いません」と想定外の発表があり、政府のメンツは丸潰れ。奇しくも“政府の前のめり”ぶりが証明されました。


 「だからさ、マスター。“記録を残したくない”ってことは残すと困る何かがあるからだってば。見せたくない隠し事、“秘密”があるからでしょ。なければ、あんなに頑なに拒む必要ないんだから。違う? そうそう最近の子どもたちって、テストの採点済みの答案用紙を隠す時、マジックで“黒塗り”にした上にご丁寧にコンビニでコピーして親に見せるらしいわよ。分かるでしょ、マジックインキじゃ下の鉛筆で書いた文字が透けて見えるから。もちろん指南役はあの霞が関の官僚たち。ガキんちょの学習能力も侮れないわね」


広海の冗談に思わず吹き出してしまいました。いやぁ、コーヒーを口に含んでなくてよかった。

 とにかく、今回の決定は、思い通りに動いてくれない専門家会議が“殿”や“取り巻き”の意に添わなかっただけ。裏を返せば、これからの有識者会議やその分科会は

政府の「三密」ならぬ「三猿」なのが透けて見えます。“(政府にとって)都合の悪いこと”には「見ざる、聞かざる、言わざる」ですね。「有識者会議」と書いて「御用会議」と読むような諮問機関の決定に、国民は今後、どう判断したらいいのでしょうか? ここで小池都知事のおっしゃる「自衛」の二文字に妙に合点がいきました。

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