君に逢えますか

鴉ぼっち@元ガー

Beginning of the story

僕が僕になる前の記憶。


僕には彼女と呼べる人がいた。

17歳の秋頃、肌寒くなる季節

その彼女が、死んだ。

電車に身を投げたらしい。


彼女の葬式も終わり、空っぽになった僕は彼女が命を落とした駅に向かう事にした。

彼女が何を想い、なぜ自殺と言う選択に至ったのか知りたかった。

そう考えている内に例の駅に着いた。


この駅は無人駅で、滅多に人が使わないような寂れた駅だ。

何故、彼女がこの駅を選んだ理由が何となく解ってしまった。


「なんでこんな所選んだんだよ」

「そんなに気に病んでて、なんで話してくれなかったんだよ...」


この駅を選んだ理由、人が来ず誰に停められず、揺らいでしまってもきっと死しか選べなくなるような駅だったからだろう。


「僕、ちゃんと居たんだけどなぁ…」

「悲しくなるなぁー」


泣きそうな顔で涙を堪えてポケットにある携帯に手を伸ばす。

君からのメッセージが来ないまま時刻を表す数字が変わるただの電子板に成り下がった携帯。

時間に目をやると時刻は19:55

この駅に着いてから3時間くらい経っていた。


「君がいない人生なんてつまらないな」

「最近、寝れてないんだ。」

「君がいた時はあんなに眠かったのに」

「もう、いいかな。」

「僕もそっちに行っていいかな?」


泣きそうな顔で笑ってしまっている自分に腹が立って仕方がない

何も出来なかった無力感、自分が何かしたのでは無いのかと言う罪悪感


もう、全部捨てよう

そう想い電車を待っていると、後ろからスーツを着た女性が話しかけてきた


「こんな所で自殺ですか?」


うるさいなぁ、

僕は無視した。


「1週間前にもここで自殺した女の子がいましたね」

「お知り合いですか?」


僕はついカッとなって怒鳴るように

「だったら何だって言うんですか?」

「あんたに関係ないだろ」


と言ってその場を後にしようとしたら

スーツ姿の女性は


「彼女に、会いたくないですか?」


一瞬、何言ってんだこの人?

バカにしてんのか?


と思ったが心は正直で

「...会えるんですか?」

と尋ねてしまった


女性は

「貴方が望むなら、会えますよ」

「ただし条件がありますけど」


僕はもう、止まらなかった

彼女に会いたい気持ちがいっぱいになってしまい


「なんですか、条件って」

「ほんとに、会えるんですよね」

「嘘だったら怒りますよ」


と返してしまった。


女性はニヤッと笑ったように見えた。


「条件は簡単です」

「まず初めに、この世界ではもう彼女と会うことは出来ません」

「2番目、貴方には死んでもらいます」


怒りが湧いた。

「ふざけてるなら帰りm」

話を遮り女性は続ける


「貴方には今の記憶を持って、彼女がいる世界に行ってもらいます」

「要するに、転生してもらいます」

「それでも会いたいですか?」


少し考えたが答えは決まってた。

「それで彼女に会えるなら」


そう答えると女性は僕に銃を向けて発砲した

ここまでが僕が僕だった記憶...

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