第43話 ハンターギルド試験だぜ!
「おはよう~」
「あら、ラピちゃんおはよう」
「母さん、おはよう」
「ラピおばちゃんおはよう」
俺達が朝ごはんを食べてのんびりしていると、ラピおばちゃんが起きてきた。そうそう、結局昨日はラピおばちゃん、起きてこなかったんだよ。だから、ジンクもガリウムのおっちゃんも俺ん家に泊まっていったんだ。
「あれ? ガリウムは?」
「ガリウム君とタング君はもうお仕事に出かけたわよ」
「お仕事って、今日はお休みでしょ?」
「違うわよ、今日はもうお仕事の日よ?」
「あれ? だって2連休の初日に出かけて、あれ?」
「ラピちゃんは2連休の初日の夜にお酒飲んで、2日目は1日中寝てて、今はお仕事日の朝なのよ」
「・・・・・・、そうだったの・・・・・・、ごめんなさいね」
「いいのよ、気にしないで。それより、早くガリウム君のところへ行ってあげて、ガリウム君、1人じゃ大変でしょう?」
「わかった、行ってくる」
「あ、ラピちゃん用にサンドイッチ作って置いたから、持って行ってね」
「うん、ありがとう。それじゃ!」
ラピおばちゃんはバタバタと走って出て行った。
「さて、それじゃあ私達ももう少ししたらハンターギルドに行きましょうか!」
「「おう!」」
ちょっと休んだらいざハンターギルドへ出発だ! ちょっと休む理由は、朝一だとギルドが込むためだ。それと、昨日の今日で俺の2号君もジンクの武装ゴーレムも修理出来ていないので、今日は歩きだ。
3人でてくてく街の中心部へ向かってしばらく歩く。そして、やってきましたハンターギルド本部! 石造りのなかなかデカイ建物だな。ハンターギルドは各門の門前広場にも支部があるのだが、この街のハンターギルドの本部は街の中心部にある。そうそう、ハンターギルド本部っていっても、あくまでもこの街のギルドの本部だからな。ドワーフの国全体としてのハンターギルド総本部は王都にあるって話だ。
俺達はそんなギルド本部のドアを開けて中に入る。中には顔に傷のあったりする歴戦の戦士風のドワーフがたくさんおり、ドアが開いたのを合図に一斉にこちらを値踏みするかのように見てくる。なんてことは起きなかった。まあ、本部は初めてだけど、支部には例の魔力箱の関係で、この1年しょっちゅう顔を出してたからな。もう慣れっこだ。
でも、なんだか支部とは雰囲気が違うな。支部の中は酒場やら宿屋やら、一通りハンターが生活していく上で必要な設備が整っていたのだが、本部の中はまるでどこかの役所みたいな雰囲気だ。しかも、ハンター達がほとんどいない。どちらかというと、普通に店商売でもしてそうな連中ばっかりだな。
「あれ? なんか西門の支部と違って、ハンターっぽい人が少ない?」
「あら、本部は初めてだったかしら?」
「俺は初めてだぜ」
「俺も初めてだ」
どうやらジンクも本部は来たことが無かったようだ。
「そっか。じゃあ簡単に説明しちゃうと。各門の支部はハンターが実際に依頼を受けたり、報告をしたりするから、ハンターが多いんだけど。ここ本部は、商人達の依頼を受けることのほうが多いのよ。本部があるのは街の中心部だから、ハンター達には門から遠くて使いにくく、商人達にはお店から近いから便利なのね。そのせいか、自然とそういう住み分けになったみたい」
「そうなんだ。じゃあ、俺達が来ることもあんまりないってことか」
「そうよ。ハンター達が利用するのは、登録の時と、後はランクアップの時くらいかしらね。じゃあ、行きましょうか」
そして俺達は母ちゃんに案内されるがままに窓口へとやってきた。
「結構人が多いのに、この窓口は空いてるんだな」
「ええ、商人さん達の依頼を受ける窓口と、ハンター登録の窓口は別口だからね。ここは大抵空いているわよ」
俺達が窓口で少ししゃべっていると、すぐにギルド職員のドワーフのおっちゃんが現れた。
「おう、またせたな。今日はそっちの坊主2人の新規登録っていいのかい?」
「ええ、この2人の登録をお願いするわ。必要書類はこれで足りるはずだけど、確認してもらえるかしら?」
「もちろんだ。ふむ、ふむふむ、書類に問題はない、全部そろっているな。よし、では試験官を呼んでくるので、しばし待っておれ」
「ええ、よろしくお願いするわね」
そう言って受付のおっちゃんは奥へと消えていった。
「うおお、ついに試験だな。緊張してきたぜ」
「アイアン、そんなに緊張するなって、俺達すでにランク4まで倒してるんだ。登録試験で落ちたりはしねえよ」
「でもよ、今日は2号君もいないし、ジンクだって武装ゴーレムいないだろ?」
「そりゃあそうだけど」
「ふふふ、落ちることは確かに無いわ。でも、ランク3までのスキップ申請をしているから、そこそこハードな戦いになるかもよ」
「だよな。生身でランク3だぜ。ちょっと緊張しちまうぜ」
「確かに、ぎりぎりの戦いになるかもしれねえな」
今回、ギルドでの試験に2号君と武装ゴーレムは連れてきていない。これは、まだ修理していないからということもよりも、ハンターギルドの資格の都合で、生身で受けたほうが都合がいいからなんだ。
簡単に言っちゃうと、ハンターのライセンスには武器の項目があるんだよな。つまり、2号君や武装ゴーレムで試験を突破した場合、2号君や武装ゴーレムに乗っているときだけしか、ハンターとして認められないってわけだ。
俺やジンクみたいな子供の場合、街から出るのに何かしらのライセンスは必須なんだけど、2号君や武装ゴーレムを使って試験をクリアした場合、どんな些細な用事でも、街を出るのに2号君や武装ゴーレムが必須っていうわずらわしいことになるんだそうだ。まあ、日本の運転免許の、メガネ必須ってのと同じだな。メガネなら持ち歩けても、2号君や武装ゴーレムだとそうはいかなからな。それはちょっとわずらわしいだろうってことで、今回はあくまでも歩兵として試験を受けるってわけだ。まあ、ランク3の試験ならそれでも受かりそうってことと、ランク3は1人前のハンターの証でもあるので、それで十分だろうって意味でもある。
それに、ランク4の資格が必要になったら、ギルドの認定委員の人を連れて、ランク4の適当なモンスターを倒せば、認めてくれるっていう昇進制度があるから、昇進しようと思えば、すぐに出来るんだぜ。
おっと、試験官のおっちゃんが来たようだな。う~む、このおっちゃん、なかなか強そうだぜ。体格的には父ちゃんと同じくらいだな。でも、なんというか、これぞベテランハンターって感じの雰囲気がすごいするな。ぶっちゃけ、こりゃあ生身で勝つのは不可能に近いぞ。
「おう、待たせたな。俺が試験官のホランダイトだ。ホランでいいぞ」
「アイアンオアだ! アイアンでいい。よろしく!」
「ジンクだ。よろしく頼む」
「ほう、見たところアイアンの坊主はまだ10歳以下か?」
「ああ、俺は7歳だ。あ、言っとくけど、ジンクは背がでかいだけで、俺の一個上、8歳だからな」
「ふむ、2人ともなかなか面白そうな面構えじゃねえか」
「ん? 失敬な、俺の顔のどこが面白いんだよ。まだまだかわいい7歳児だぜ!」
「いや、アイアン。そういう意味で言ってるんじゃないと思うんだが」
「がっはっは、ジンクの坊主の言うとおりだぜ。俺はこう見えてそこそこ強いんだ」
「いや、こう見えてって、どっからどう見ても強そうな気配しかしないぞ?」
「そんな俺が、軽く戦闘モードに入って近づいたってのに、お前らの興味は俺が強いかどうかだけだったろ?」
「いや、試験官ってくらいだから今から戦うんだろ? それが普通じゃないの?」
「アイアン、多分ホランさんは、俺もアイアンも一切怖気づいたりしないで、強さを探るような視線しか送らなかったって意味で、面白い面構えって言ったんだと思うぞ」
「え、そうなのか?」
「がっはっは、どうやらジンクの坊主のほうが賢いようだな。アイアン、学校行く前にきちんと勉強しとかないと、後で大変なことになるぞ?」
「ぐむむむむむむ」
「はあ」
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