第42話 母ちゃん達からの試験7だぜ!
「エメラおばさん。これで大丈夫なのか? 門番さん達が起きたら、結局ばれるんじゃないのか?」
「あら、それは平気よ。ばれても問題ないもの。あの問答は言ってみればお遊びよ!」
「そうなの?」
「ふふ、ジンク君、今日移動した距離って、どのくらいかな?」
「え~っと、時速40kmで3時間弱だから、120kmいかないくらいかな」
「その通りね。そんな離れたところに安全確保のための大きい建造物を建てても、文句を言われる心配はないし。爆発魔法にしても、100km以上離れてたら、街からはよ~っく見ると空がちょっと明るいかな~くらいにしか見えないはずなのよ」
「言われてみればそうだな」
確かにな。100kmなんて、東京都心から富士山までの距離だもんな。
「じゃあ、まったく問題ないってことなんだ」
「ええ、そうよ。たぶんちょっと気になったハンターのだれかが、ギルドに報告して、それが門番さん達にまで回っちゃったんじゃないかしら。それで、たまには変わったことをさせたくて、調査に出てきたってところかしらね」
「そんなもんなの?」
「そうよ。だって現場の若い人はともかく、守備隊とギルドの上の人達は、私が野営時に土魔法で防御陣地を作ることを知っている人は多いからね」
「じゃあ、門番さんをよわせっちゃった件は?」
「あら、それこそ問題ないわ。聞きたいことがある門番さん達を誘い入れたのは問題ないでしょう?」
「ああ」
「時間的にも、その時にお酒やご飯がその場にあることも問題ないでしょう?」
「うん」
「お夕飯を食べずに来た門番さん達に、ご飯を食べないかって誘うのも問題ないでしょう?」
「う~ん」
「ね、酔いつぶれるまで飲んだのは、あの人たちの責任ってわけなの」
「う~ん、そんな簡単に酔いつぶれるまで飲むものなの?」
「ジンク君もその内わかるようになるわよ。ドワーフの男というのは、お酒の誘惑にはけっして逆らえないのよ。ましてや美味しいランク4の手羽や牛モンスターのお肉まであったのよ。あれは絶対に断れないわ。それに、今回の件で門番さん達に調査を命じた上の人は、飲み会するところまでお見通しなのよ。まあ、言い方を変えれば、ラピちゃん女王陛下に、部下を献上したってところかしら」
「うう~ん。そういえば、母さんが酔いつぶれてたのはなんで?」
「それに関して言えば、ラピちゃんとガリウム君が100%悪いわ。昨日、西門をでてしばらくいってから2人と分かれたでしょう?」
「うん」
「私達も見守るのに飲食物はほしかったから、私とタング君で2人を尾行して、その間にラピちゃんとガリウム君に買出しを頼んだの。そしたら。お酒がいっぱい入っていたの」
「はあ~」
「ちなみに、お城も爆発魔法も、指示したのはラピちゃんだからね。私は最初はアイアンちゃんに対抗して、同じくらいの大きさだけど、ちょっと豪華な要塞を建てたのよ。でも、お酒が入ってきて、ラピちゃんがもっと大きいお城が良いって言い出したんだもの。爆発魔法もよ。ラピちゃんが静か過ぎるって文句を言うから使っただけよ」
「ご迷惑をおかけしたようで、すみません」
「いいのよ、ジンク君が気にすることじゃないわ。強いて言うなら、2人があんな大物しとめるんだもの、ついついうれしくなって、飲んじゃったみたいなの」
「そっか」
「ええ、そうよ」
「でも、俺の武装ゴーレムとアイアンの2号君の破損状況を見る限り、不合格っぽいけどな」
「そんなことは無いわ。満場一致で合格よ」
「「そうなの?」」
え、まじで? どう考えても不合格だと思ってたのに。俺の2号君もジンクの武装ゴーレムも結構壊れてるし、無事なのは荷物のキャリアーである1号君だけだ。
「正式な結果発表は明日になると思うけど、心配しなくても大丈夫よ。それじゃあ、お肉屋さんにお肉を卸してから、帰りましょうか。ジンク君も一旦私達のお家に来てね。ラピちゃん達寝ちゃってるしね」
「わかった、お邪魔します」
まずは肉屋さんだ。
「おっちゃ~ん、肉持ってきたぜ~!」
「お、アイアンとジンクか、よく来たな。今日はどんな肉だ?」
「へへへ、今日のは飛びっきりのやつだぜ! じゃっじゃ~ん!」
そう言って俺とジンクは昨日狩った軍鶏モンスターを見せる。
「こいつは、軍鶏モンスターじゃねえか。しかもなんつう大きさだ。ランク4としてもかなり大きいほうじゃねえか!」
「昨日一番近くのホットスポットまで行ったんだぜ。だから、狩ってからもう1日くらい経ってるけどな。それと、羽のうち片方は攻撃でキズついてたこともあって、昨日の夕飯にしちゃったぜ」
「いや、そこは問題ねえ。お前さんらの氷魔法での処理は文句のつけようがねえからな。羽の件も了解だ。それじゃ、また査定が終わったら2人の家のギルド口座に半々ずつ振り込んどくぜ」
「うん、よろしく頼むぜ!」
「ああ、頼んだ!」
そして家について、ジンク交えてのランチアンドお昼寝タイムだ。7歳になった俺だが、やっぱお昼寝は気持ちがいいからな。ついつい寝ちゃうんだよ。ただ、生理的に絶対寝ちゃってた今までとは違って、昨日みたいに寝ないで済まそうと思えば、寝ないでもいけちゃうんだよな。
「くあ~、よく寝たぜ」
「あら、アイアンちゃんおはよう」
「よう、おはよう」
「む、ジンクはもう起きてたのか?」
「まあな、でも、普段よりがっつり昼寝してたみたいだ」
「ふふ、2人とも始めての野営で、思ったよりも疲れてたのよ」
「そうなんだ~って、もうこんな時間?」
まずった、今日は昼寝の後で2号君の修理をしたかったのに、目が覚めたら4時過ぎだと!? くう、これでは出来ることが少ないではないか!
「2号君や武装ゴーレムを直したいのでしょうけど、それは今度にしましょう。こういう疲れてる時に無理するものでもないわ。タング君やガリウム君も、今日はのんびりしたいみたいだしね」
「そっか、とはいえあんまりだらだらしてるのもな」
「気にしなくていいわよ。ラピちゃんなんてまだ寝てるからね。今日はお夕飯もここで食べていくといいわ」
「母さん、まだ寝てるのか?」
「ええ、ラピちゃんはお酒好きなんだけどね、だいたい2リットルくらい飲むと、変なテンションになって、4リットルも飲むと完全にダウンしちゃうのよ。お酒の種類にもよるんだけどね」
ん~、それは十分すぎる量なのではないかと思うが、ドワーフ基準ではそれでもお酒に弱いとされるのだろうか? いや、確かに父ちゃんは、本気で飲む時はタルを抱えて飲んでる。けど、中身が見えないからあれがどの程度の勢いで消費されているのかがよくわからないんだよな。うう~む。
「そうだったのか」
「そういうわけだから、今日はのんびりしましょう」
「わかったぜ母ちゃん。でも、父ちゃんが起きてるなら、2号君の対空戦闘に関する改修案の相談をしたいな」
「お、それいいな。俺もそろそろ武装ゴーレムの改修をしてほしいと思ってたんだよな。あとはハンター登録時にも試験があるみたいだから、それのことも教えてほしいかな」
「そうね、じゃあタング君もガリウム君もリビングに居るから、リビングに行きましょうか」
「「は~い」」
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