第38話 母ちゃん達からの試験4だぜ!
「まじで許さん! 絶対許さん! ローダーゴーレム、ぴかぴか弾装填だ!」
「いいのかよアイアン、この状況でぴかぴか弾はまずいだろ」
「ジンク、もう決めたことなんだ。付き合え」
「はあ、しゃあねえなあ」
ぴかぴか弾は通常のAPCRとは違い、ミスリルをベースに貴重な魔法金属だけで作られた超高級弾だ。威力も俺の消費魔力もすさまじいが、なにより財布へのダメージが計り知れない。空中にいる軍鶏モンスターにこれを撃って、もしはずれたら・・・・・・。当たっても貫通してどこかへ飛んでいったら・・・・・・。考えるだけでも憂鬱になるレベルで大損だ。だが、後半部分の心配はともかく、前半部分の心配は、いまならこの俺の怒りが、確実に軍鶏野郎をぶち抜くと信じている。
「ぴかぴか弾装填完了。ジンク、あいつはどこだ?」
「一旦着陸して、再度勢いをつけて飛ぶつもりっぽいな」
「わかった、次で確実に仕留めてやる」
「でもよ、仰角が足りないんだろ? どうする気だ?」
「土魔法で斜面を作って強引に仰角を作るさ。その代わり完全に動けなくなる。防御は頼んでもいいか?」
「あいよ、つきあってやらあ」
「安心しろ、1撃で仕留めてやるぜ」
軍鶏モンスターは助走をつけて再度飛び上がると、先ほど同様高度をとって、まるで急降下爆撃機のように俺達目掛けて降下して来る。顔に集まる魔力もさっきよりもかなり強い。なるほど、さっき程度の攻撃じゃあ、俺達にはさほど有効じゃないってわかったようだな。
「にしても、あの魔力、こいつは結構やばそうな威力だぞ」
「ああ、わかってる。でも、ジンクが防げないほどじゃないだろ?」
「ふん、まあな」
「確実に当てるために、やつが攻撃モーションにはいった時を狙うぜ」
「わかった、俺もアイアンの魔力にやつが気づいて逃げるのを避けるために、とりあえず撃ちまくるぞ」
「おう、頼んだぜ」
さ~て、2号君、間違いなくここが正念場だ。俺達の力、見せ付けてやろうぜ。
ぼふふふふふふふ!
ジンクは左肩の機関銃を撃って、軍鶏モンスターの冷静さを失わさせる作戦を開始する。軍鶏モンスターもその攻撃が効かないのはわかっているのだろう。顔に飛んでくるその攻撃に、うざったいとでも思ったのか顔を振るが、それだけだ。そして、軍鶏モンスターは、思いっきり頭を引くと、大声と共に風の砲弾を発射してきた。
「くおっけくおっこお~!」
いまだ! 俺もその動作に合わせてぴかぴか弾を発射する!
「と~り~か~ら~!」
どっご~ん!
すさまじい爆音と衝撃が俺の2号君に襲い掛かる。ここ1年ちょっとで俺の魔法の力があがったこともあり、下手な攻撃を食らうよりもぴかぴか弾の反動が大きかったりする。平地で撃つ分にはそれでもぎりぎり耐え切れてたんだが、斜面で撃ったせいで2号君が衝撃に耐え切れずに思いっきり後ろにこける。
ばっし~ん!
だが、弾の軌道はきちんと確認済みだ。俺のぴかぴか弾は軍鶏モンスターの風の砲弾とぶつかり合う。むこうの風の砲弾もすさまじい魔力の篭った風だ。普通なら風ごときで砲弾が止まることなんてないが、流石だぜ、だいぶ威力が削られちまった。でも、それでも俺のほうが上だったようだ。俺の砲弾は少しそれたが、軍鶏モンスターの右羽の付け根に突き刺さり、容易くこれを貫通した。
「よし、きやがれ!」
ど~ん!
そして、風の砲弾の残骸はお構いなしに俺達に襲い掛かってくるが、それはジンクが盾で守ってくれた。あぶねえあぶねえ、残骸とはいえ結構威力あったな。ジンクの盾じゃないと防ぎきれなかったかもしれねえぜ。
「くあ~!」
どすん!
ちっ、そうだ。胴体狙って撃ったぴかぴか弾だったが、軍鶏モンスターの強烈な風の砲弾のせいで、ぴかぴか弾が多少それやがった。
「ジンク!」
「ああ、わかってる! ちょっと待て、すぐに起こしてやる」
俺はジンクにひっくり返った2号君を起こしてもらう。いや、勘違いするなよ? 土魔法で地面から柱を出せば、自力でも起きれるんだからな? 本当だぞ! ただ、そうするよりジンクに起こしてもらったほうが魔力の消費が少ないんだよ。本当だからな!
「軍鶏モンスターはどんな感じだ?」
「お前はそこで休んでろ。あとは俺がやる」
「いいのか?」
「いいもなにも、砲塔旋回装置がまともに動かない状態でぴかぴか弾撃って、2号君無事なのか? 無理するな」
「ん? げえ、砲塔旋回装置壊れてるじゃねえか! なんで言ってくれねえんだよ」
「いや、俺言ったよな。ぴかぴか弾はまずいだろって」
「くっそ、てっきり金銭的な心配かと思ったよ。すぐ修理する」
「ああ、そうしてくれ。いざとなったらスモークディスチャージャー頼むぞ。あいつもあの怪我だ。追ってはこれまい」
「おう、わかったぜ」
「ま、余裕で仕留めるがな」
そう言うとジンクは1人軍鶏モンスターのもとへと向かう。軍鶏モンスターもそれに気づいたようだ。大ダメージを受けた右羽をかばいながらも、威風堂々と立ちあがる。
「悪いが、相棒がお前のことは絶対に許さないと言ってるんでね。狩らせてもらうぞ」
ジンクは剣と盾を構えて、軍鶏モンスターと対峙する。ジンクの盾もさっきの攻撃で結構歪んでいるってのに、かっこつけめ。
「こけ~!」
軍鶏モンスターがジンクに襲い掛かる。飛び掛ってのキック攻撃だ。右羽の痛みを感じさせないすさまじい蹴りだ。ジンクはこれを盾を使って受け止める。
がご~ん!
まるで交通事故でも起こったかのような大きな音が辺りに鳴り響く。こっからじゃ見えねえが、今の蹴りに込められた魔力と音だと、ジンクの盾でもそう何発ももたねえぞ。軍鶏モンスターもそれは気づいたはずだ、それだけでは終わらないと、更にキックを繰り出す。だが、思いっきり足を振り下ろしたその2発目の蹴りを、ジンクは受け止めずに、盾で受け流す。
がりりりり! どすん!
ジンクの受け流しにより、軍鶏モンスターは地面を思いっきりキックしてしまったようだ。そして、そんな軍鶏モンスターの足をジンクが武装ゴーレムで踏みつける。おお、こいつはすごいな。流石の10m越えの軍鶏モンスターだって、20トン近いジンクの武装ゴーレムに踏まれたら、そう簡単に振りほどけないだろう。
軍鶏モンスターも片足を踏みつけられた程度であきらめない。あいているもう片方の足でジンクを執拗に攻撃する。ジンクはこの攻撃を左手の盾で防ぎながら、右手の剣でこちらも執拗に踏みつけている足に攻撃をする。
どすんどすん! がんがん! どすんどすん! がんがん!
ジンクの盾が壊れるのが先か、軍鶏モンスターの足が折れるのが先か、といった戦いになったが、勝利の女神はジンクに微笑んだ。なんともいえない鈍い音と、軍鶏モンスターの悲鳴のような声と共に、軍鶏モンスターの足はへし折れた。
「くええ・・・・・・」
軍鶏モンスターが力無く鳴く。ここまでがんばって闘った軍鶏モンスターだが、もう虫の息で横たわる。ジンクは止めを刺すために軍鶏モンスターの首へと歩みを進める。
「いま楽にしてやる」
ジンクのそんな声が届いたのか、あるいはもう限界だったのか、軍鶏モンスターは身体強化魔法を解いて、ジンクの止めを受け入れる。こうして俺達は、無事? に、軍鶏モンスターの狩りに成功するのだった。
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