パノラマ学童期

天球儀ナグルファル!d(*´ω`🎀)

プロローグ 

 幼かった私は財布ももたずに少ない小遣いを握りしめて家から近くの文房具屋へと急いだ。目的は文具ではない。


 昼からカンカンと照りつけていた太陽はその最後の力を振りしぼって周りの景色までをも、朱に巻き込み沈もうとしていた。


 往来に人は少なく私は自身の影にリードをとられながら、頼りなく歩いていた。すると先に一軒の古びた家がみえてきた。

 

 目的地に着いたその場で呼吸をととのえる。汗が地面に染み込む。私の意志とは無関係に肩が上下する。顔をあげると半開きになった玄関が臨めた。その薄暗い先には商品棚が色彩豊かな世界を創っていた。が、私はその世界には踏み込まずに玄関左隅の方へ視線をうつす。


 ・・・あった。

小型自動販売機がヨコに二列。透明のプラスチックケースから商材が見え隠れしている。

いわゆるガシャポンと呼ばれる玩具販売機。

デパートとはちがい、小さなお店に置かれるこのオモチャ達の期間は驚くほどみじかい。

今日は運がよかったのだ。

「さて・・・と」

コイン投入口へ小銭を入れる。重いレバーをゆっくり時計回りに。レバーの動きに合わせてコインも半回転する。

ガチャガチャ・・・ガチャンッ。 

架台下から勢いよくポーンッとカプセルがはじき出された

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