15 では、反省会をしてみましょうか

 婚活とは、相手あってのこと。

 しかし、結婚できない理由は自分にもある!

ーそれで解決したら、みんな「婚活」なんてしないって。

              ★

 婚活が長くなると、どうしても言われるのが、「上手くいかないのは、あなたに問題があるんじゃないの?」

と、言う言葉。

 まあ、確かにそれは否定できません。

 婚活をしていると、確かに女性側にも問題はあるなと感じる場面もあります。(私も含め)

 合コンで良い男がいないと言うことで途中で帰った人とか、婚活パーティーで「良い男がいない」と言って食べてばかりいる人とか、「高収入でなきゃ!」とか「五十代男はおよびでない」とか……。

 私も前述のように、無意識に男の方のプライドを、すぱぁぁぁぁと切り刻んでいますので、確かに自分が悪いのかもしれません。

 幼馴染に、「何で男って生き物は、自分のフィールドに『嫁』という人間がぽこっと増えるのが結婚って思っているんだろうね?」と、聞いてみたら、男子には引かれました。

 男と女は脳の構造が違うので、私の考えることは、男の方には理解できないのかなと思っていたのですが。

「と言うより、あなたは思考が男性よりなのよ。男性がふつーにナチュラルに『当たり前』と思っている事を、あなたは疑問に持って、突き付ける。そこが男性には『怖い』のよね」

 と、結婚相談所の方に言われました。

 いえ、別に。自分では、その気はないです。

 ただ、話の広がりを出すために言っているだけです。

 互いのことを知って、互いの興味のあることないことを出し合い、共通の「好きな物」を探り合うのは、とても大切なことだと思うのですが。

「基本的に、そんなことは男は考えないって。婚活に来る男性は、結婚に『夢』を見ているからね。『自分に合わせてくれるかわいいお嫁さん』を」

 でも、それには心当たりがあります。

 これまた、お見合いをしていた時の話です。

 この方はずっと独身を通された五十代の方でした。

「食べ歩きが好きなんです。普通の日でも、外で食べていることが多いです」

 と、その方は、はにかみながら言われました。

 良いです、私も食べ歩き大好きです。

 ですが、外で食べるのも良いですが、自宅で作るのも良いです。

 食べることは人生の一番の楽しみ。自炊はほとんどしないと言う彼に、話を広げるためにも、そう言ってみることにしました。

「あ、でも自分で作って食べるのも良いですよ!」

 そう言った瞬間。彼の表情は止まりました。

 「地球が静止した日」って言うタイトルの映画がありましたが、まさにそんな感じです。

 つまり彼にとって、「自炊も良いですよ!」という話はあり得なかったんです。

 本当に、純粋に「食べ歩き」が一緒にできる人が良い、と考えていたみたいなんですね。

 こんな人もいました。

 これまた、お見合いで知り合った方でした。

 バツイチ子持ちの方ですが、なかなかおしゃれな感じの方です。

 一回目にお会いした時にお話しで盛り上がりました。

 そして映画が好き、というこの方とは二回目にお会いすることになりました。

 二回目にお会いした時、聞かれました。

「どんな映画がお好きですか? 恋愛映画ですか?」

「いえ。恋愛映画は突っ込んじゃって、あまり楽しめないんです。それよりは、ドキュメンタリーの映画の方が好きですね」

 私はそう答えましたが、その瞬間、彼を襲ったのは沈黙の艦隊でした。

 彼も、本当は恋愛映画が好きだったのでしょう。

 悪いことではありません。

 ただ、私とは感性が違う、と言うことだけです。

 けれど、これまたどちらも私は「お断り」をされたのです。

 

「お互いに好きな物をディスカッションして、お互いに譲り合うことで楽しむってことをしたいだけなんですけどね」

「それって、すごく高度なことだから!」

「そうなんですか?」

「たいていの男は、合わせるよりも、『合わせてくれる』方を期待するものなのよ」

「なんででしょうね?」

「ご両親はそうでないの?」

 確かに父は「俺が正しい!」と言う悪い意味での「俺様」な部分はありますが、「はっ? 家事に男も女もあるか!」と言うあの時代にしては恐ろしいほど革新的な祖母に育てられただけあって、掃除もこなす、料理もこなす、そして母には頭が上がらない。

「なるほどね……」

 結構相談所の方は、遠い目になりました。

 まあ、自分の家庭が他所の家庭に比べると、多少なりとも特殊であることは、理解はしています。ですが、それは父母が協力した上で、築いた家庭でもあります。

「まず、勘違いから訂正すると、婚活する男性にディスカッションは無理です」

「えっ?  そうなんですか!?」

 結婚相談所の方に言われて、私は衝撃を受けました。

「そもそも、女性に声をかけることすらできない、ウブな人が多いのよ? あなたの求めることは、とてもハードルが高いことです」

「えええっ!」

「話もできない人達に、議論はできません」

 しかし、言われた内容はもっともなことでした。

「なのに、合わせてくれることを期待するって、そこにどんなメリットがあるんですか?」

 「まあ……ないわね。ただ、女性の方が人に合わせるのには長けているから、恋する気持ちが強い場合は、自然と合わせるようにしているのよ」

「だから、熟年離婚が増えているんですね」

「そうとも言えるわね」

 結構相談所の方の言葉に、納得が行く私です。

「合わせて貰って当然、という態度をずっとされれば、愛は枯れるわ。男でも、女でもね」

 そう言えば、こんなこともありました。

 この方は、仲人さん同士の紹介でお見合いした人でした。

 その方はこれまたバツイチ子持ちでした。

 しかし、何度も書いていますが、バツイチであろうが子持ちであろうが、避ける理由にはなりません。

 むしろ、ある程度の年代になれば、初婚の人よりも、魅力的な人が多いです。

 まあ、例外もありますが。

 とりあえず、話の続きを進めましょう。

 その方は、転職する際に元奥様と揉めたらしいのです。

 ステップアップのために仕事を辞めて、勉強をしたいその方と。

 子どもが小さいと言う事で、反対したという元奥様と。

 しかし、元奥様の反対を押し切って、その方は資格試験の勉強を始めて、無事に合格し、現在の高収入の仕事に就かれることができました。

 元奥様は、その方が前の職を辞められた後に、娘さんを連れて家を出られ、そのまま離婚となったそうです。

 さて、ここまで聞きますと、元奥様が随分と理解のないような方に思えるかもしれませんが、皆様はどうでしょう?

 私ですか? 

 ふーん?でした。

 だって、彼は私にこう言ったのです。

「娘には、ずっと会っていない。養育費も払っていない」

 だから安心してください、と。

 皆さんなら、どうですか? 

 こう言われて安心できますか? 

 嬉しいですか?

 私ですか?

 これまたふーん?でした。

 養育費は子どもの権利なのに払っていない、離婚以後、会っていない。

 これ、父親としては最悪ですよ。

 でも前にも書きましたが、男と女のことは、当事者にしかわかりません。

 それは、家庭のこともしかりです。

 だから、それだけで判断はできないと思いました。

 まずは、人となりから。

 そう思って彼と付き合う気でいましたら、二回目会った日の夜。

 いきなり、仲人さんからお電話がかかって来ました。

「彼があなたとの結婚話を進めたいって言っているの。どうしますか?」

 と。私は、ふむ、と思いました。

 私としては、やはり「子どもに会っていない。養育費を払っていない」と言う事が引っかかっています。

 それに、もし彼と子どもに何かあったとしても、支えていけるだけの覚悟もまだありません。

「すいません、もう少しお付き合いを続けたいのはダメですかね?」

「あら。まだ、早い?」

「そうですね」

 仲人さんの言葉に、私は頷きました。彼と付き合うのは、楽しかったので、もう少し付き合ってから決めたいと思ったのです。

「そうね。大切なことだもの。わかったわ、先方にもそう伝えます」

 私の言葉に仲人さんもそう言ってくださり、電話は切れました。

 それから一時間後。

 仲人さんから、再度お電話がかかって来ました。

「言いにくいんだけど・・・・・・先方がお断りしますだそうです」

 あらま、って感じです。

「やっぱり気に入らないって言われたんですって」

 手のひらを返す、とはこういうことだな、とも思いました。 

「結婚を急ぐ男は、ろくな奴がおらん。よかったたい」

「そうそう、相手は誰でんよかとよ」

 事の次第を話すと、職場の人生の先輩方は、そう言ってくださりました。この時は、ちょっと優しくしてくださりました。

 でも。何となく、彼も元奥さんにこんな態度だったのかな、と思いました。

 仕事を辞めて資格試験に挑戦する自分を、元奥さんは応援してくれなかった。

 元奥さんの気持ちも、わかります。

 小さい子どもがいて、これから先の生活には不安が付きまとったでしょう。

 それを、この方は許せなかったのかもしれません。

『私はあなたの夢に協力するよ!」という言葉が欲しかったのに、元奥様は反対した。

 だから。

 元奥様を、私にしたように、「拒絶」したのかもしれません。

 そうして、その「拒絶」に耐えきれなくなった元奥様は、彼の元を去ったのかもしれません。

 もちろんこれは、あくまでも私の想像でしかありません。

 けれど。

 この方は当然のことのように、二回しか会っていない私に、自分を受け入れることを望んだのに、不安を感じる私を受け入れる気はなかったのです。

「ちゃちいわね、その男」

 結婚相談所の方は、私の話を聞いて、そう言われました。

 私もそう思いました。

 ようは、受け入れられなかったから、受け入れない。

 お互い様ではありますが、歩み寄りをするつもりがないと言うのは、ちゃちい男の証拠でもあります。

 「でもね。それでお終いにしたら、ダメなのよ」

 しかし、結婚相談所の方はそうも言葉を続けました。

「相手が悪い。私は何も悪くない。それでお終いにしたら、あなた、このままよ」

 結婚相談所の方、容赦なしです。

 けっこう重い「言葉」を、投げかけて来てくれました。

「あなたは男の人よりも聡いところがあるし、それを受け入れてくれない男性が多いのも確か。けれど、それを受け入れてくれる男性はいるはずなの。そのためにも、『隙』と『受容』は必須よ。きちんと覚えていきましょう」

「『隙』と『受容』ですか……」

 何か、とても難しい気がするのは、気のせいでしょうか。

「別に、嫌な男を我慢して受け入れろってことじゃあないわ。ただ、お見合いをしている時は、その人が何を言っても、『受け入れる』ことを心がけてみて。会話の基本は、『さしすせそ』よ」

 前章の呪いですかっっっ!

 と、突っ込んだあなた。私と同類ですね。

「確かに、婚活をしている男の方に魅力的な方がいないことは事実よ。でも、それは『わかりやすい』魅力よ。わかりやすい魅力を持っている男は、そもそも婚活する必要ないじゃない」

 けれど、言われていることは、もっともなことです。

「私は仲人としては、たくさんの男性を見てきたわ。そして、わかったことは、どんな男性にも必ず素敵な魅力はあるってこと。それを見つけて、磨き上げることが、女性の婚活をする上での醍醐味なのよ」 

 何と言うか、この結婚相談所の方は見かけはゴージャスな美人さんなのですが、言っていることは体育会系です。と言うか、「漢」です。

「いい? 男は、キットよ!」

「はいいい!?」

「俺好みの女に育てるって、男は言うけれど、実際は違うの。女の方が、男を自分の好みに育てるのよ。『女性は男より三歩下がって』って言うけど、当たり前じゃない。後ろにいる方が、男は操れるものなのよ」

 確実に、漢です。男よりも最強な漢が、ここにはいますっ!

「良い男の傍にはね、必ず賢い女がいるものなの」

 それは、歴史を見る限り、その通りです。

 織田信長にしても、豊臣秀吉にしても、賢い正妻が傍にいました。

「だから、あなたが一番大切にしたい物を理解してくれて、それを受け入れてくれるのであれば、それ以外はあなたが育てて身に付けされば良いのよ。そのためにも、まずは相手を好きにさせないとね。そのためには、あなたも相手を受け入れて、そして相手を気持ちよくさせないとね」

 「ちゃちい男に対してもですかっ」

「だって、練習しなきゃ。『良い』と思った相手を捉えることできないじゃない」

 何を言っているの、当然じゃないと言う顔で、結婚相談所の方は言いました。

「ちゃちい男は練習台と思ってれば良いのよ。実際、練習しなきゃ上手くならないわね。それに、お見合いをしている間なんて、長くて一時間でしょ? それぐらいの間は、我慢しなきゃ」

 笑顔で結婚相談所の方はおっしゃいましたが、言っている内容は、体育会系の教師です。

 つべこべ言わないで、やれ。やって、己を向上させろ。

 つまりは、そういうことです。

「それから、『隙』を作ること。男の人に何か言われたら、あなたすぱって返しているでしょう?」 

 はい。全くもって、その通りです。

 「そこに少し間を空けると良いわよ。そうするだけで、『隙』ができて相手は安心できるわ」

 結婚相談所の方は、そう言われました。

 結婚相談所に入ると、相談所の方に、色々なことを言われます。

 それは、本当に色々なことで、自分の価値観を根底から否定されます。

 そこで、

「ああ、そうなんだ」と思うのか、「いや、こうだ!」と思って、自分のやり方で行くのか。

 それは、人それぞれかもしれません。

 ですが、婚活をしていて思うことは、どの結婚相談所の方々も同じことを言われるのです。

「素直な人は、相手が決まりやすい」と。

 彼らは、プロです。

 色んな男女を見て来ているから、そのアドバイスは経験から来ているものなのです。

 自分のやり方に拘り過ぎるのも、婚活ではあまり良き事とはされていません。

 「お金を払っている以上、何かは得ないと。『受容』と『隙』を覚えれば、それだけで人生楽じゃない」

 言われていることにも、一理あります。

 ただ、皆様。納得いかないこともあるかもしれません。

 でも、自分の納得いく範囲で実践して行くのは、大切です。プロの意見は、やはり筋が通っているものが多いです。納得は納得なのです。

 私ですか?

 とりあえず、日々精進しております、とだけ言っておきましょう。

 いや、だって。

 この性格で半世紀近く生きて来たんですよ?

 すぐに変われるわけないじゃないですかっ!

 とりあえず、職場の男性に仕事を頼む時は、「お願いがあるんだけど」「教えて欲しいんだけど」と言う言葉を付けると、スムーズに仕事をしてくれることはわかりました。



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