蘇る本能


特殊詐欺の電話が掛かって来た

「もしもし?」

要約すると息子の知人が代理で金を受け取りに待ち合わせ場所へやって来るそうだ

「息子は大丈夫なんでしょうか?」

わたしは語気を強め問いただした

「大丈夫ですよ」

電話向こうの相手は優しげにこちらに寄り添うようにして言った

そして存在しないわたしの息子が大丈夫なことが確定された

「今の電話だれ?」

娘が言った

「いや、なんでもない」

待ち合わせ場所に着くと受け取り役の若い男を暗がりへ連れ込み半殺しにした

わたしはかつてフランス特殊部隊に所属していた

そのおかげで助かった

「………危ない危ない、まさかわたしの秘められた闇の歴史がこのような平和な日本の一角で役に立つとは思わなかったな」

そう呟くと再び町内会の副会長であるいつもの自分へと戻った

家には遊びに来ていた孫がわたしを待っていた

だが久しぶりに鮮血を見たせいか興奮し孫の些細な癇癪に腹を立て締め殺してしまった



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