真実の夏


「たわけがあっ」

じいちゃんが怒った

じいちゃんは征夷大将軍だった

妄想の中で

現実世界では池の鯉に萎びたペニスをしゃぶらせるだけのただの爺だった

鯉にしゃぶらせているその最中に中腰のままおれに言うのだ

「アメリカ、許すまじき!」

じいちゃんにとっては何でもアメリカのせい

近所のご贔屓だったスーパー『忠実屋』が潰れたのもアメリカのせいだと思い込んでいる

じいちゃんの中でまだ戦争は終わっていないのだ

「ずがーん、どひゅーん、びゃばばっ」

今だって空中戦の真っ最中

今日は何機、墜落させたんだい?

おれは視界に映ると不愉快だから頃合いを見計らってじいちゃんを絞め殺し庭に埋める算段を整えた

計画は即、実行されなければならない

じいちゃんは埋まった

だがこれは詩の世界なのでおれは罪に問われなかった

今、何か真実に触れたか?


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