第三スタジオにて


「ちょっと胸毛、燃やして」

そんなADからの指示におれは困惑する

ふりをする

何故ならおれは胸毛燃やし芸人だから

胸毛を燃やさなくても良いという指示が来たら終わりだ

「ちょちょ、ありえないっしょお!」

派手なオーバーリアクションで右往左往した

だがその発言とは裏腹に心の中のときめきだけは隠しきれなかった

おれがおれに戻ることの許される唯一の瞬間

それが胸毛燃やしタイムだ

まさか図面の段階からちやほやされるだなんて思ってもみなかった

かつてない手応え

あとは部品を組み合わせるだけで完成だった

さらなる飛躍のため牛乳を踏み散らした

コンビ名はキッスアンドエタニティー


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