ホームレッシュ


おじさんはね

お金が一番、大切なんだよ

そのために愛とか夢とか歌っているのさ

この公園でね

すると錆び付いた空き缶の中に十円玉がごろごろと投入されるわけ

「うほっ、宝の山」

おじさんは両手をダンボの耳みたいに広げてその喜びを表現するんだ

そうするとお金を投げ入れた人も喜ぶからね

ああ良いことをしたんだなあ………って

ところで話しは変わるけどおじさんはハムが好きでね

ハムに目がない

「あ、ハムだ!」

遠くからでもハムが落ちていればそれがハムだとわかる

全自動ハムサーチ機

これは一種の才能だよ

見つけるや否や即、飛び掛かるんだ

「やっぱりハムじゃん、これ!」

こんな日は嬉しくって涙がこぼれ落ちそうになる

「ハムゲットだぜえー!」

今年で五十六歳になりました

まだまだ素人童貞を捨てるには早すぎると思っています

「今日も前向きに生きるぜっ」

永遠の旅人

そのようなフレーズが突如、おれの脳裏に稲妻のよう浮かんだ

「おれはホームレスじゃねえ、永遠の旅人だ!」

空を見上げた

そこが神様のお部屋

そして大地がおれの部屋

犬の糞なんか勝手に捨てる奴がいたら懲らしめてやるよ

「ヘーイ、ミスターポストメーン~」

お得意のビートルズのナンバーを午後イチで噴水前の広場で披露した

(著作権は大丈夫なんだろうか)

満月の夜は心配で夜も眠れない

「オノヨーコをおれの性的魅力で何とかすれば大丈夫か」

結論と同時に安堵する

テントの中で指をくにくにと動かし仮想オノセックスに没入した

するとホームレス仲間のゲンさんがやって来た

「ちょっとごめんよお〜」

おれはキレた

「ゲンさん! ひとんちに入る時はノックぐらいしてくれって言ってるよな!」

ゲンさんはしょんぼりと懐から焼酎を取り出した

「こいつを一緒にやろうと思ってよう」

「焼酎じゃん!」

おれはゲンさんとすっかり仲直りしそいつを呑み明かした

人生や、穴場のゴミ捨て場について深く深く話し合ったのだ


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