ニセモノ夫婦の紅茶店 ~あなたを迎える幸せの一杯~

神戸遥真/メディアワークス文庫

『ニセモノ夫婦の紅茶店 ~あなたを迎える幸せの一杯~』シリーズ第2巻発売記念大ボリューム掲載

Prologue

Prologue



 れたての紅茶のカップ片手に、飾り気のないメモ帳に神経質なまでに整った文字で書かれた四つのルールを私は見つめた。



1.互いの部屋には入らない

2.共同生活に関わることは一人で判断しない

3.本当の夫婦でないことは他言しない

4.どちらか一方の申し出により、いつでも関係を解消できる



「本当にこれでかまいませんね?」


 しゆうさんが何度も念を押してくるので、だから私は何度もうなずく。


「ばっちりです」


 たった四つのルール。

 私がここにいてもいいあかし

 両手で胸に抱きしめて、ステップを踏みながらくるくる回りたい気持ちになってくる。

 ほんの数日前まで絶望のまっただ中にいたっていうのが信じられない。

 秀二さんはそんな私をメガネの奥から観察しつつ紅茶をすすり、やがてカップを置いた。

 ダイニングテーブルを挟んで向かい合っていた私たちは視線を交わし、ちょっとだけまじめな空気になって姿勢を正す。


「それでは、このルールでやっていくということで」


 そして、どちらからともなく頭を下げて。


「よろしくお願いします」


 かけた声が重なり、こうして私たちの生活がスタートした。


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