第87話 クリフォードと来訪者 その1 ~聖堂前~
――少し前のこと――
「主役がこんなところにいてよろしいのですか? 旦那様」
いつものメイド姿ではなく、礼装をしたブレンダは、いつにも増して
「私の準備は終えましたからね。参加していただいた方に
クリフォードは、きつく
「ところでホリーがどこに行ったか知りませんか?」
「お嬢様でしたら、先ほどキャサリン様のご
「ほう、また、トーマスと」
あの男、やはりホリーに気があるのか? いくらキャサリンの子供といえど、ホリーに手を出したら……。
「はぁ、旦那様。お嬢様のことになると冷静さを失うのは悪い
「ん? ははは、気のせいですよ。ちょっとホリーの心配をしただけじゃないですか」
しれっとした顔で、クリフォードが
「よう、クリフ。来てやったぜ」
「あ、テッドさん、ありがとうございます」
にへら、と笑みを浮かべて、テッドがたらたらと歩いてきた。礼服を着ているが、だらしなく
「ははは、これで本当に結婚だな。もう逃げられないぞ。覚悟はいいか?」
「普通に祝福してくれませんかね」
「わるいが心にもないことは言えないんでね。ところでヘヴィコングはどこだい?」
「イザベルさんならドレスの着付け中ですよ」
「俺はベルのことだとは言ってないぜ」
「……」
これは、テッドに後で
「だが、ベルがいないんじゃ、つまんねぇな。せっかく、おもしろい祝いの
「祝いの品って、やっぱりあれはテッドさんの持ち込みでしたか」
「ふふふ、できれば隠しておいて、驚かせたかったんだが、ちょっと大きすぎたな。まぁ、いい。とりあえずクリフにだけ見せてやるよ」
「見せてやるも何も、もう見えてますけど」
アキリズ聖堂の
第三深域に生息する巨大生物。龍と名がついているが、実際には、龍ほどの魔力はない、が、皮も牙も爪も価値が高く、亜龍と呼ばれている。その肉は
「うれしいんですけど、これを
「あぁ、死ぬかと思ったぜ」
「無駄に命を
「何だ? 心配してくれんのか?」
「いえ、あなたはどうでもいいんですけど、振り回される隊員のことを思うと涙が出てきます」
「ははは、確かに帰り道では、隊員に殺されそうになったよ。あれが、いちばん命の危険を感じたな」
「ほんと、よくまだ生きてますよね。世の七不思議の一つですよ」
「当たり前だろ。俺を誰だと思っているんだよ」
誰だろう。ただの死にたがりにしか思えないんだけど。
「で、まだ始まらねぇのか?」
「すいませんが、もうしばらく待ってください」
「はぁ、ただ待つのも飽きたんだよな。ちょっとぶらぶらしているよ。そういえば裏にオーディン像があったな。なぁ、知っているか、クリフ。あのオーディン像には仕掛けがあってだな」
「いや、知りませんし、興味ありません。それより、裏の方に行くのでしたら、ホリーを探してくれませんか。ホリーも裏の方に遊びに行ってしまったようなので」
「おまえ、人の話をぶっちぎっておいて、よくそんな頼み事ができるな」
「まぁまぁ、いいじゃないですか。ついでですよ。ついで」
「そういうところあるよな、おまえ。うん、まぁ、いいけどさ」
さて、面倒な奴が去ったとクリフォードは一心地ついたのだけれども、それも
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