三十路の女騎士なんだが誰かそろそろ嫁にもらってくれないだろうか
最終章
三十路の女騎士なんだが誰かそろそろ嫁にもらってくれないだろうか
三十路の女騎士と婚活パーティとお見合い
第1話 女騎士の経歴
嫁にいき遅れた。
これはどうやら間違いないと、イザベル・オルブライトは確信する。
剣のみに生きてきた。
身も心も、そのすべてを剣に
周りの女子が服や化粧や宝石やと話している最中、彼女は目もくれずに訓練に励んできた。時間があれば剣を振り、時間がなくても剣を振った。
特別、才能があったわけではなかった。それでも、強くなりたい一心で、剣の腕を磨き続けた。
努力が実ったのは、二十歳を過ぎた頃。
偶然も重なり、国家最強と称される、
イザベルは、魔境騎士団で目覚ましい成果をあげる。彼女の持ち帰った宝物は数知れず、歴代の魔境騎士団の中で、最も深部へと到達した。
中央都市に帰還した後、王から精霊騎士勲章を受章した。
数々の功績を称えられ、イザベルは王家直属の
それから三年、イザベルは立派に王下騎士団としての責務を果たし、今では、王下騎士団の団長に抜擢されるに至った。
剣に生きて、剣を認められた。
順風満帆に見えるが、苦労も多かった。ただ、悔いのない人生を送ってきた。
そして、今年で30歳を迎え、イザベルは、ハッと気づいたのだった。
完全に嫁にいき遅れていると。
機会がなかったわけではない。年頃になってから、親から縁談を何度も持ち掛けられた。その度に、何かと理由をつけて断ってきた。
精霊騎士勲章をもらったときも、三大貴族の一つ、キングストン家との縁談があったのだ。
両親は、たいそう喜んだが、イザベルはその結婚が嫌過ぎた。王下騎士団への入団を決めたのは、実はそれが原因だった。
本当は王下騎士団よりも、スリルの多い最前線の魔境騎士団にいたかったのだが、それ以上に結婚が嫌だった。
キングストン家といえども、王下騎士団を理由にされては、文句も言えない。
その結果、ずるずると歳を重ね、いつの間にか三十路である。
「縁談の誘いはあるか」
そう両親に尋ねると、母は涙を流し、父は悔しそうに顔を背けた。
「あと、10年、いや、5年早ければ……」
適齢期を過ぎていることは認める。
しかし、泣くことはないだろう。
若くなければ女ではない。
そう言ったのは、いつの教官だっただろうか。腹立たしい言葉であるが、いざ、結婚のこととなれば、あながち間違いでもない。
歳を重ねるにつれて、縁談の数は減っていき、今のイザベルにもたらされる縁談は、もはや零となったらしい。
だが、そう悲観することもないだろう。
たかが結婚である。年齢というハンデはあるが、こんなもの2000体のアンデッド軍団と戦うことに比べれば、楽なものだ。
そもそも、縁談を待つという考えが、イザベルには性に合わない。
何事も先手必勝。
男なんぞ、こちらから選び、そして、攻めて攻めて、打ち倒す。
結婚適齢期である十代を過ぎた女達が、結婚のために活動することを、婚活などといって、バカにする傾向もあるが、そんなことを気にするような繊細な心は持ち合わせていない。
イザベルは、にやりと笑みを深め、イアリングを揺らし、ヒールをかつんと鳴らす。
「さぁ、
ーーー
2000体のアンデッド軍団・・・魔境地域にある王国デストピア。その国の幹部スカル大将軍が率いる軍団。アンデッドで構成されており、基本的に死なない。イザベルが魔境騎士団に在籍していたときに、壊滅させた。基本的に死なないのに。ただし、この後の物語には、ほとんど関係ない。
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