異世界のプロによるエロトラップダンジョン強奪記
シャル青井
プロローグ
「ちょっとちょっと、あんた、正気なの? 監視役として言わせてもらうけれど、今ならまだ戻ってこられるから、早くその目の前のブツを捨ててしまいなさい!」
フェアリーのエリアリが小さな体を大げさに揺さぶりながらそう叫ぶ。
それも無理はあるまい。今イフネ・ミチヤの前に並んでいるのは、くすんだ赤いジャージと黒髪の長いウィッグ、そして胸パッドの入ったブラジャー。
今しがた、通販で届いた品物である。
「そうは言うが、これらは今度の仕事で重要なアイテムだからな。なにしろ挑むは男子禁制のダンジョンだ」
「それでそんな変態みたいな真似を?」
「変態なのは俺じゃない、ダンジョンの主だ。それに今時、女装程度のことを変態というような雑な認識でいたら白い目で見られるのはお前の方だぞ。まあ、俺も別に女装趣味はないが」
言いながらイフネはウィッグを被って、机の上に用意してあった鏡にその姿を映してみせる。
「どうだ?」
「……なんというか、微妙に探せばどこかにいそうな感じの気持ち悪さがかえってムカつくわね」
その言葉を聞いて、イフネは心なしか少ししょんぼりとしながらウィッグを取る。
「まあそれはわかったわ、で、その赤いジャージはなに?」
「そりゃ、女性になるならジャージの色も変えないと」
真顔でそう返してくるイフネに対し、エリアリはただ大きくため息を付いた。
「はぁ……あんたのほうがよっぽど雑な認識じゃない……。そもそも、そんなカツラとかジャージにこだわらなくても、変身魔法でも使っておけばいいんじゃないの?」
「変化魔法はコストがそこそこ掛かるからな。
「なにがありのままよ。で、その仕事、実入りはいいわけ?」
「報酬自体はまあまあ、ってところかね。ただ、
いくつかの世界の冒険者が財宝目当てにダンジョンに挑むのと同様に、次元を行き来する
そのダンジョンの主が溜め込んだ財宝もさることながら、彼らが編み上げたダンジョンの魔力構造そのものが、一つの小さな次元と化していることも多いのだ。
そしてそういったプチ次元からは、上質な魔力が確保できる事が多い。
元々その世界の持ち主がいるダンジョンはウォーカー同士での規制などもありなかなか手出しができないのだが、こういった案件で元の持ち主を排除してしまえるなら話が違う。
そのまま乗っ取ってあとは好きに作り変えればいい。
イフネのようなフリーの存在にはこれほど魅力的なものもそうそうない。
「そうだ、この手の属性ダンジョンなら久しぶりにあいつの出番もあるかもな……。用意しておくとするか」
呆れたままのエリアリを無視して、イフネは脇にあった箱から一つの小さな青い玉を取り出し、それをポケットへとしまい込む。
これこそが、時空のおっさん、イフネ・ミチヤがとある魔王とそのダンジョンに挑むための下準備であった。
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