『禁断の焼き芋大戦』

やましん(テンパー)

『禁断の焼き芋大戦』

 * これは、すべてフィクションです。


 * 1930年代~50年代あたりの映画の色合いで(まあ、『第三の男』

とか、更に古い『格子なき牢獄』とか・・・)、しかも、『素人講談』の、ような感じで、お読みいただければ幸いです。



         🎈  🎈  🎈



 ” さて、全世界は、いまや、悪魔の科学者、『ドクターG』によって、支配されていたのである!   パパン!


 彼が開発した、『全人類隷属化装置』により、全ての人々は、事実上、人間のままでありながら、半ロボット化され、『ドクターG』が開発した、巨大コンピューター『アンナ』によって、効率的に管理されていたので、ある。


 おかげで、あらゆる『戦争』は廃止され、『武器』も、調理器具や大工・工作用具以外は、全廃されたのである。


 パン・パン・パン!


 もとも、『ドクターG』を、すべての『創始者』としてあがめる以外は、さして難しい教えとか、理屈とかはなかったので、そういう意味では、簡単であり、覚えなくてはならない事も、一般人には、あまりなかったのであります。


 パパン!


 また、専門的なことは、コンピューター『アンナ』の端末機器やロボットたちが、おおかたやってしまうので、人間が手を出すことは、事実上それほどなかったのである!


 代数も、幾何も、地理も物理も、パソコンも、庶民は、とくに、何も知らなくてよくなったのであります。


 そういう意味では、『作者』などには、大変、住みやすい世界となったのである!



 パン・パン・パン!



 さて、実際、人類文明は、『第1次産業革命』はるか以前に戻され、蒸気機関も、ガソリンエンジンも、電気力も、もちろん、原子力も、テレビもラジオも、電話も扇風機も、洗濯機も冷蔵庫も、みな、廃棄されたのであ~る。


 パン・パン・パン


 よって、巨大なビルを作ることもなくなったし、交通機関は、せいぜい、馬車か牛車くらいになった。


 学校も、非常に簡素なシステムになったのだ。


 ただ、『ドクターGは偉い! ドクターGにすべて従う事!』ということと、あと、読み書きそろばん、少々だけを習えば、それで、よかったのである。


 微分も積分もいらない。


 うるさい上司も、もう、いない。


 素晴らしい世界ではないか!



 パン・パン・パパン!



 ただし、ハイテク技術が、またく、無い訳ではなかった。


 ここが、古代と違うところでありまして、ごく一部の、『ドクターG』直轄の『管理部門ロボット』や『半アンドロイド人間』などは、『超ハイテク空中移動装置』や、『重力通信機』やら、果ては、『反重力動力』を持つ『宇宙船』なども、使用していたのである。すごい!



 パン・パン・パパン!



 つまり、科学文明は、『ドクターG』の、『人工惑星』において、蓄積されていたのだ!


  パパン!


 さて、まあ、多少時間はかかったが、新しい世界に反対する人間は、もはや、誰もいなかったのでありまする。


 『ドクターG』は、その新しい世界の始まりを、独裁者らしく『新G紀元元年』とし、それ以前の事物は、あらゆる、美味しい食べ物なども含め、『すべてを』いったん、捨て去る様に指示したのである!


 それで、人類は、大方すべて、忘れたのであった。



  パパパン・パン・パン!



  ********   ********



 さて、それから、約300年後、身体をアンドロイド化させた、『ドクターG』は、地球を周回する『人工惑星』上に、常に居住し、まさに、『神』のように君臨していたのだ。


 しかし、用心深い『ドクターG』は、自らを『神』とは呼ばず、『神はここにはいないのさ!』を合言葉として、用いていた。


 部下たちが、すれ違うときの挨拶や、『ドクターG』に会う時も、もちろん、これが使用されていたのである。


 すなわち、さっと左手を、斜め下に向け、『神はここにはいないのさ!』と叫ぶのである。


 『ドクターG』自身は、自らを『神の代理』である、と言っていたと、いいますが・・・


 これは、『責任は、神にある』、という意味なのである。 


  パン・パン・パパン!


 

    ********   ********



 え~、さて、閑話休題、かつて栄えた、ある国の『宮殿』と呼ばれる石造りの建物は、今ではすっかり凍り付き、中に入る事もできなかったが、その周辺は、人びとの行き交う、ちょっとした繁華街になっていた。(本当は、『議事堂』というもので、あるらしいが・・・)


 ある日、変わった荷車を引いた老人が現れたのである。



『いしや~~~き、いも~~~・・・おおお・・ぉぉぉおおぉぉおぉぉぉ・・・・《ぴィぃ~~~~!!》・・・(間)・・・ いしや~~~き、いもおおおぉぉお~~~~~~ぉぉぉぉおおぉぉ・・・・ おいも!《ぴィぃい~~~~!》・・・・・・』


  (はははは・・・聴衆の笑い声・・・)


 本人のせいなのか、紙をまるめた『メガホン』が、ぼろなのか、かすれたり、少し止まったりしながらだが、その不思議な声と、笛の音が、街を、す~~~と通り抜けたのだ。


『いっこ、いちドリムだよ。早いもの勝ちだよ、・・・いしや~~~ㇵ~~~、きいもぉぉおおおぉぉ・・ぉおおおおぉぉぉ~~~~~~《ぴィぃぃ~~~~~~~!!》』



「おかあさん、あれなに?」


「たべものだろうかねぇ。昔のじいちゃんの話には聞いたことがある。はるかに大昔に、お芋といふものを、ふかして食べる習慣があったとか、だって。いまは、みたこともないけどね。禁止食料では、ないけどなあ。ないものは食べられないからねぇ・・・あたしも、初めて見たよ。まあ、まあ、おかしな格好だねぇ。たべものと言うものは、『ドクターG』さまにより,『真四角』が、決まりだけれど・・・あれじゃあ、まるで、石みたい。」


「たべたああい~~~~~!買ってぇ~~~~~! ねぇ。買ってよお~~~~!おかあさあん! 買ってよぉおおお! お腹すいたよおおぉおお!・・・」


「珍しいものを食べると、おなかが痛くなるよ。」


「いい子にするから。『どくらーG』さまの、言うこと、よく聞くからさあ!」


「『どくたー』です。しょうがないねぇ。まあ、いちドリムなら、すごくお安いかな。お父さんにも買って、それで晩ごはんにしちゃおうか。」


「うん!」



  **********   **********



さて、ここは、『ドクターG』の、『人工惑星』であります。


いままさに、部下が、急き込んできたのである。



パパン!!



「ドクターG! あ、『神はここにはいないのさ!』・・・ あの、地球上で、不穏な動きがあります。『いしやきいも』というものが、反ぎゃくを企てているようです。いちドリムという、格安価格で販売しているとか。」


「はあ? 『いしやきいも』って、あの、いしやきいもか?」


「ご存知なのですか?」


「ああ、知ってるよ。500年くらい前は、よく、『スーパー』なんかで売ってたからね。」


「す、すーぱーですか? なんだ、そりゃあ?」・・・・こほん・・・・  



 まだ、生まれて30年くらいの、この半人間、半ロボットの側近は、そのようなものは、知らないのでありますな・・・。


「やきいもが、なんで、反逆するのかなあ? あえて、禁止などはしなかったが、『都市庶民食』を決めたあとは、まず街中では、流通してないはずだがな。・・・まあ、『郊外』には、いまでも、自生しているとは聞いている。むかしを、ふと思い出した、ぼろアンドロイドの年寄りがいたんだろう。・・・まあ、1ドリムなら、『内部販売規定』にも背かないし、もうけも少ないだろうな。『自主販売』の枠の中ということでよいだろうさ。ただ、既定の『登録』だけ、きちんとさせておけば、それでよかろう。あとは、まあ、しばらく、ほっとけ。」


「は! ほっとけ、ます。『神はここにいないのさあ!』」


 ああ、これこそが、『ドクターG』の、唯一の、弱点であった。


 わりと、年寄りには、やさしいのである。


 さすがの『独裁者』も、歳を取ったことも、ま、ある・・・


 パパン!


 まあ、それに、独裁者というものは、やすものは、甘く見るものなのだ!



 パン・パン・パン!



 しかし、『ドクターG』が、これをほっている間に、『いしやきいも』は、なぜか、すぐに全世界に広まり、ついに、『ドクターG』が提供する食い物よりも、実は、うまいものがこの世にはあったのだ!

 

 という、おそるべき真実が、アッというまに、知れ渡ったのである!


 一部の物好きは、さらに、『ラーメン』というものも、古い文献から見つけ出したのである。


 『ドクターG』の権威は、ついに、崩れ始めたのであった。



 パン・パン・パン! パパパパパン!

 


 しかし、新しい世界が来るまでには、この先、大動乱が待っていたのだ!


 『ドクターG』の『人工惑星』は、その後、大量に地球の周囲に残っていた《宇宙ゴミ》に直撃されて、な、なんと、『ドクターG』は、あえなく、滅んだのである。



 パパパン・パン!



 そうして、息子の、『ドクターGis』が、後を継いだのであります。


 しかし、これらは、すべて、《宇宙ゴミ》を、人口惑星にぶっつけたことも、あっという間に、『やきいも』の情報が広がったことも、地球の新しい支配権を狙っていた、『アンドロイド人間』(この点、ドクターGは正しかったのだが・・・) 『ドクターH』の、仕業であった!


 パン・パン・パン!


 パン・パン・パン!


 そう、あの、『やきいもうり』のおじさんこそが、名高い、あの、『ドクターH』その人であったのである!


 『ドクターH』は、『人類文明再興』の旗印を掲げて、ここに、ついに、登場したのだ!


 パ・パン!


『ドクターH』は、『アンナ』の拘束を破ったが、それにより、再び、地球の平和は破られ、『地球人類』は、またまた、『やきいも大戦』と、後の世に呼ばれる、激しい闘争の時代へと流れ込んだので、ありまするが・・・



 ぱぱぱぱ! パン・パン・パン!!



 ・・・・・、『壮絶・大地球興亡史』!!・・・、本日、これまで!


         またの、ご来場を、お待ちいたしておりまするうう!


  

   どわ~~~~~(拍手)!


 

 《新地球『I』暦465年5月5日 『地球帝国『空中都市25』『I』劇場大ホール』にて収録・・・・なお、音源が古いので、一部お聞き苦しい場面がありました。ご了承ください。『三代目地球亭へっぴり』さんによる『古典講談』の時間を、終わります・・・。》 ”


            




 ************  👅  ************


                           おしまい

   

 




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