第4話 信じられない学校生活
「おい伊吹、大丈夫か!?」
「……多分」
もう意味が分からない。この現状からひとまず逃げようと思い、机につっぷした。
奏太と外観でも分かる伝統のある高校に入るやいなや、4人の同性が話しかけてきた。
名前は……
会話のテンポが超高速なのに、不思議と自然についていけた。
誰々に告白されたとか、あいつとあいつはデキてるとか、そういう話もあった。だが、そう言って周りが出した名前がなんとなく知っているものばかりなのが疑問でしかない。
昨日まで途切れる事なく週5で学校生活を送っていた玄関の先の世界とは、名前以外まるで違う。容姿も、学校も、人気も、全てが。異世界転生をしたみたいだ。
「今日のお前なんかおかしいぞ。怖い夢でも見たのか?」
「違う。昨日徹夜でゲームしてた」
「それはただの自業自得!!」
自業自得、という博の発言に、奏太達5人が爆笑する。
……案外良いな、この生活。皆の純粋な笑顔を見て、そう思った。
最近誰とも話していなかったから忘れていたけれど、自分は元々大人数と会話していても疲れる性格ではない。むしろその方が楽しいのだ。小学生の頃は学級委員もよくやった。
「おはよっ、帰宅部男子6人組。何昇降口前で戯れてんの?」
「おお、ハセじゃん。おはよ」
錦が一番に反応した直後に4人がワンテンポ遅れて挨拶をする。僕はその後さらに遅れて「おはよう」と返した。
男子並に身長の高い、ロングヘアーの彼女は
……生活は良いけど、フルネームが手に取るように分かる謎が深すぎるのがちょっとな。
だけど、流石に全生徒の名前が分かる訳ではないみたいだ。さっきまでに僕の横を通りすぎた人の大半は名前も何も知らなかった。
ハセはそのまま、「お、ゆらじゃん」と、とある女子の所へ行った。
ゆら、という名前は聞いた事がない。きっと中学が同じだったとかで、今は別クラなのだろう。けれど、2人の身長差や髪型には見覚えがあった。
……昨日、玄関扉を開けようとしているのをガン見していた女子高生2人組。制服は違うけれど、姿は全く同じだ。
そう思った瞬間、ホームルーム5分前を知らせるチャイムが鳴り響いた。
僕らは目を見開き、無言で教室に向かった。
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