第2話 格闘女王リリー、ロリ巨乳の童顔魔導師女の子にいぢめられる

「咆牙掌(ほうがしょう)ッ!!」

下からねじ込むように繰り出したリリーの右手、掌底突きが、髪を結いくりくりとした瞳の童顔少女を紙やドア、玄関、コンクリートブロックごと粉砕する!!

吹き飛ぶ正門! はじけるちょうつがい!

もうもうと湧き上がる白い煙……!


「……痛ったぁ〜! 突然なにするんだよリリー!」

破壊されたコンクリート片を小さくゆらし、頭の上にちょこんとがれきを載せた魔導少女のアタリ・カチューシャが頭をあげた。


「ひどいよっリリー! ボクまだなにもやってないのにっ」

「まだなにも!? もうやってるでしょ! なんなのよさっきの紙はー!」

リリーの抗議を気にもしない様子で、アタリはまわりのがれきをガラガラと崩しながら立ち上がった。

「魔導師じゃなかったら今頃死んじゃってたかもだよ!? もしボクが死んじゃったら、リリー責任取ってくれるよねっ」

アタリはブゥと頬を膨らませてみせる。

そう、アタリ・カチューシャは魔導師である。防御力アップの魔法や素早さの魔法もなんでも使える。最近は魔法を駆使してこの辺のダンジョンを全部攻略していく勢いの新進気鋭の魔導少女だ。

ながいポニーテール。ちょっと茶色がかった髪の毛。

茶色い瞳。とがった鼻。しまった体つき。

それでもって、巨乳。童顔。幼女のくせして肌の露出多め。

小さいのに巨乳。

青い魔導服は上等な絹を多用していて触りごこちもつるつるすべすべ。

そして巨乳。

白の質素なアウターに、魔導石をはめ込んだ青い胸パット型の魔導鎧。

胸パットからこぼれた、乳!

四角いメガネが童顔少女の顔の真ん中に乗っている!


「ふんっ、魔法が使えるってだけでそんなに自慢するんじゃないわよっ」

「ねーねー責任取ってくれる?」

アタリはリリーの裾を小さく掴んで、おねだりするように引っ張った。

「ねーってばぁリリー」

ちょっと顔を赤らめながら。

「あーもーーーーーっ。そんなことより、さっきの紙の話は?」

「紙〜?」

「こーれっ!!」

リリーは足元に落ちていた紙の破片を取り上げると、地面に座り込むアタリの顔の前にぴたりと突きつけた。

「自分で持ってきたんでしょ? なによこの、こここ、コンヤクハキって」

「こんやくはきぃ?」

リリーの差し出した紙を大きな瞳を寄り目にしながら読んだアタリは、天使のようににっこり微笑んだ。

「コンヤクハキ、じゃないよ。こんにゃく履きだよっ! さいきんハラジ◯クとかで流行ってるやつ!」

「はぁ〜?」

「タピオカミルクティーみたいなもんだよ!」

アタリはよくわからない言いわけを言い始めた。

「カロリーオフでダイエット的な? ってゆーか、きっと食べものじゃないなにかなんだよっ!」

「そのカロリーオフがなんの関係があるのかしら?」

「こんにゃくみたいにつるるんぷるぷるー、、、みたいな」

アタリは自分でなにを言ってるのかわからない様子だったが、ふとあることを気づいたようで親指をパチン鳴らす。

「リリーのおっぱいみたいな人をこんにゃく娘とかいう人も、いるじゃない? そんなカンジだよきっと!!」

「はぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!!!!」

リリーは腰を落としてアタリに連撃雷風脚……リリーの特技のひとつ、足を駆使した挌闘技をお見舞いすべく気合を入れた。

「その減らず口、今すぐしゃべれないようにしてやるっ!」

「うわっわわわ! ぼうりょくはんたい!」

アタリは防御魔法陣を唱えながら数歩後ずさった。


と、ここまでがこの二人の朝の挨拶のようなものだった。

リリーのお屋敷にアタリが来ると、いつもこんな感じだ。

リリーはアタリより年上だし付き合いもそれなりに長いので、なんかもういちいち怒っていても際限がないような気がしていた。

最近はもっぱら諦め気味なような?

というか、なにをしようとしてたんだっけ。

「あーっ、もういいわ。わたし、これでも忙しいんだけれど。遊びたいなら他の人のところに行ってくれる?」

「リリー、はたらいてたんだ?」

「ムカッ!💢 当たり前じゃないの! わたしはハデス様につかえる地下神殿の守護者、闇の格闘巫女のリリーよ!」

「ハデスには気にもとめられてないけどねっ」

「いちいちいちいちいちいち余計なことを〜ッ!!!!!」

リリーは近くに転がっていたコンクリートの大きめの破片を掴んで投げつける構えをした。

「年上に対する礼儀というものを教えてさしあげますわ!!」

「ぼうりょくはんたいだよ〜っ!」

アタリはかわいらしい小動物のような表情で慌てたが、首から下は冷静な様子で防御陣の印を指先でたぐってリリーの格闘技を全力で牽制している。

「くっ……ムカつく!!!!! 理不尽よこんなのッ」

踊り子であり、巫女であり、ハデスの神殿を格闘技で守護する女王でもあるリリーは、手に持ったコンクリート片を誰にも向けられない怒りとともに床に叩きつけた。

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