森は何を食べるか

成上

西暦XXXX年四月一日

「遂にやった!」


 小さく呟いた男は、早速ファイルをクリックした。





 今日から我々第一調査団による人類未踏の地の「巨大樹林」の調査が始まった。

 映像と実況による記録で報告しようと思う。

 さあ、いざ入るぞ。



 遠目から見てもデカいとは分かっていたが、本当にとんでもなくデカい。

 ほとんど全ての木が目測百メートルを超えている。

 こんだけ鬱蒼としていれば暗いだろうと思ったが、意外とそうでもない。夜は分からないが、昼間なら十分に辺りが見える。学校で習った熱帯林を巨大にした感じだ。

 鳥か何かの鳴き声や地を這う音は聞こえるのだが、姿が見えない。引き続き探索を続ける。



 だいたい一キロメートルを歩いたぐらいかな。鳴き声の種類がとても多くなった。だが、依然姿は見えな──おい、みんな止まれ!

 何かが左の茂みで動いている。もしかしたら姿が見えるかも知れん。

 ──あっ!クリス!早く写真を撮れ!

 ようやく初めての生物が現れた。これは……なんと言えばいいんだ?

 見たとおり、全体が葉っぱのようなもので覆われている、兎ほどの小ささのものだ。その葉っぱは、随分特徴的な形状をしている。

 擬態のためか?とにかく、葉っぱのせいで、どんな種類の生物かは分からない。それが我々の前に現れ、こちらをじっと見ている。

 よーし、いい滑り出しじゃないか?捕獲を試みようと思う。

 ジャックはそっち側に行って……そうだ、挟み撃ちに──あっ!

 ……奥へと逃げられてしまった。まぁ、いい。気を取り直して探索を続ける──

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る