第6話 レベリング
異世界に来てから3日が経過した。
さすがに森ネズミではレベルが全く上がらなくなってきたので、周りの探索をしつつ行動範囲を広げることにする。
ちなみに今のレベルはこうだ
シュウ
勇者Lv7
種別:人族
HP58(26up)
MP92(31up)
使用可能な魔法:初級火魔法、初級風魔法、初級水魔法
コタロウ
種別:飼い猫
HP74(33up)
MP0
「コタロウ、何か怖い物みたらすぐ教えるんだぞ」
「ニャア」
慎重に歩を進めていくと、水音が聞こえる。
「沢があるみたいだな、よし。行ってみるか」
音の方へ進んでいくと前方に幅1メートルくらいの小さな沢がある。
「おー。いいねー」
日中、蒸し暑いなか森の中を歩き回ってノドからからだったオレは喜んで駆け出した。そのまま一直線に沢に駆け寄ろうとした瞬間、沢の水を飲んでいる獣と目が合う。
「あ・・・」
見た目イノシシみたいな動物で口元には獰猛なキバがある。その小さくて三角の目は、明らかにオレをロックオンしている。
「や、やべ」
と思った瞬間、そのイノシシみたいな獣がこっちに猛ダッシュしてきた。
「うわー。助けてー」
情けないことにオレは腰が抜けてその場に座り込んだ。
「もう、ダメだ」
と思った瞬間、横からコタロウが飛び出しイノシシの首筋にキバを突き立てる。
イノシシはお構いなしにオレへの突進は止めないが、その軌道が少しだけズレた。
オレは慌てて横に飛びのき、なんとかその突進を躱した。コタロウもイノシシから離れてまた距離を取る。
イノシシはそのまま30メートルほど進んで止まり、こっちをまた睨む。
そして、またこっちに猛ダッシュを開始した。それを見てまたコタロウが身構える。
「コタロウ大丈夫だ」
今度は落ち着いてる。オレはよく狙いを定めて
「ファイアーボール」と唱える。
火の玉はそのまま一直線にそのイノシシに向かっていき、その身を焼き尽くす。
「ポンっ」
そして、次の瞬間肉が出現した。今度は見た目豚肉っぽくて脂身がある。しかも森ネズミに比べて量が多く見た目5キロはある。もはやスーパーで売ってるサイズじゃなく、肉屋のサイズだ。それを見てオレは小躍りした。
よしよし、またまた食事のレパートリーが増えるぜ。
っとまたまたイノシシ発見。ここから20メートルくらい先にいるが、まだこちらに気付いていない。オレはそっと鑑定してみると、
「鑑定結果」
森ブタ:その獰猛なキバと突進力はなかなかの戦闘力だが、攻撃手段が猪突猛進な突進のみなのがタマに傷。肉は、かなり美味。
だと。
つまり落ち着いて戦えば、楽勝ってことじゃないか。
「よし、行くぞコタロウ。ヤツらを血祭りにあげてやろうぜ」
結局その日はその後3頭の森ブタを狩り、レベルは10になった。
シュウ
勇者Lv10
種別:人族
HP70(12up)
MP112(20up)
使用可能な魔法:初級火魔法、初級風魔法、初級水魔法
コタロウ
種別:飼い猫
HP104(30up)
MP0
ベースキャンプに戻ったら、丁度夕暮れ時だった。
「メンドリー帰ったぞ」
と森レグホンに声を掛ける。いつも卵を提供してくれるので、愛着もわき名前を付けてやったのだ。
「さてと、晩御飯にするか」
今日は最高の食材が手に入ったからな。確かに森ネズミも悪くはないんだが、ちょっと淡白なので物足りなくも感じていたのだ。
ということで今日は森ブタの肉をシンプルに鉄板焼きにて頂くことにする。
前に平らな石をカットしてまな板替わりに使っているのをたき火の上に固定し、鉄板焼きならぬ岩盤焼きにする。遠赤外線でじっくり中まで火が通るだろう。
肉はこれまた、鋭利な石をカットした自家製包丁でステーキに適した大きさにしてスジ切りをする。それにまたまた岩塩をまぶして焼き上げる。
「ジュワー」
脂の焼ける音と匂いに期待が高まる。ひっくり返すと脂がいい具合に焦げて最高の焼き色だ。しばらく待って両面が焼けたら出来上がり。お皿替わりのバナナナの葉っぱに乗せて
「頂きます」
「ニャアー」
「あ、コタロウは猫舌だから冷めるまでちょっと待つんだぞ」
恨めしそうに見るコタロウを横目に猫舌でないオレはグリルしたブタの鉄板焼きを頂く。
一口ほうばってみると
「???なんじゃこりゃ?」
あまりの旨さに悶絶する。
「旨い。旨すぎる!脂の旨みってこんなにすごかったっけ?コレ犯罪的に旨いぞ」
あまりの旨さにちょっと涙ぐんでしまう。
「あ、冷めたからコタロウも食べていいぞ。」
コタロウも待ってましたとばかりに食いつく
「ウ、ウミャー!」
相当、旨かったらしい。夢中になってガツガツ食べてる。
「ふうー。食った食ったー」
結局、オレとコタロウはそれぞれステーキを5枚ずつ完食した。
さすがに2人ともお腹いっぱいだ。
ふと見上げると月が見える。きれいな満月だ。こちらでも現世と同じ月がある。でもこちらの方が大分大きいし色も青みがかっている。
「コタロウ、見てごらん満月だよ。」
満月を見ていると現世を思い出してきた。そう言えば、取り残されたコジロウは大丈夫だろうか?
こちらに来てから毎日生きるのに精いっぱいで余裕がなく今まで忘れていたが、コジロウの事が心配になる。
「コタロウもコジロウのこと心配だよなあ?」
「ニャーン」
コタロウはオレのとなりで一心不乱に毛づくろいをしている。現世では、コジロウとよくなめ合いっこしていたのだが、それを思い出しているのかも知れない。
生まれた時から一緒の血を分けた兄弟だからな。コジロウとは。
それにしても、オレ達はこれからどうすればいいのだろう?
その日は、夜更けを過ぎてもなかなか寝付けなかった。
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