第6話 王子ムハンマドと美少年スター ⑥

 カナリヤは自分に下された罰も知らず、眠っていた。

 もうすぐ、麻酔が切れるころだった。

 王子ムハンマドはカナリヤの甘く美しい歌声を早く聴きたいと思った。

「イマージュ、早く目覚めるのだ。私を待たせるな!」

とイマージュの耳元でささやいてみたが、イマージュはまだ眠ったままだった。

 横たわっているだけでも美しく悩ましいイマージュの肢体に触れながら、

「イマージュよ、私がその美しい肢体で奏でるにふさわしい、新しい音楽をお前に教えてあげよう。今までのお前は、全く間違っていたのだ。お前は私を喜ばすために生まれてきたのに、本来の使命を忘れて、間違った場所で間違った音楽を奏で続けようとしていた。だから私はお前を助けてあげたのだ」

とムハンマドは言った。そして、

「本来ならばお前は死刑に値する罪を犯したのだぞ。でも私はお前を許すことにした。お前を愛しているからな。私の海よりも深い愛で、汚れてしまったお前の心と体を清めることにしたのだ。だからお前は、私に感謝してその罰を受けなければならない」

とも言った。そして眠るイマージュに覆いかぶさり、

「早くおきろ、イマージュ!」ともう一度、耳もとでささやいた。

 しかしイマージュは、唇を少し開け、まるで誘っているかのような美しい顔で、静かに眠っていた。ムハンマドはついにしびれを切らし、 

「イマージュよ、私はもうこれ以上は待てぬ」と叫んだ。そして

「お前にもっと優しくしたかったのだが、無理なようだ。でもこれは愛の鞭なのだ。お前の罪ゆえに、最初は痛みを感じるかもしない。しかしすぐに慣れるだろう。そして私に感謝するようになる」

とつぶやき、イマージュに口づけをし、抱きしめた。

 そしてムハンマドはイマージュをより強く抱きしめ、

「イマージュよ、愛という名の世界一美しい音楽を、これからお前は、私のためだけに奏でるのだ」と、命令するような口調で言った。

 イマージュは深い眠りから覚めつつあったが、まだまどろみの中にあり、自分に降りかかった、災難としか言いようがない不幸を、まだ何も知らなかった。


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