第2話  王子ムハンマドと美少年スター ②

 その日、王子ムハンマドは朝からご機嫌斜めだった。そして側近たちにその苛立ちと怒りをぶちまけていた。怒りの原因はイマージュだった。


 ムハンマド王子は自国でイマージュのコンサートをプロモートしたことから、イマージュの所属する事務所の上層部とついにコネクションを築くことに成功し、イマージュの個人アドレスを手に入れたのだ。


 ムハンマドは当然、イマージュにメールを送り始めるようになった。

 一国の王子から送られてくる特別なメールである。当然イマージュも返事を返した。しかしあまりに頻繁になると、イマージュはメールを返すのが煩わしくなった。メールの交換はそれでも3カ月続いた。そしていつしかムハンマドは、自分とイマージュは特別な絆で結ばれていると錯覚するようになっていた。

 そんな中、ある日突然、イマージュからメールの返事が来なくなったのだ。

 最初はイマージュが病気なのかもしれないと心配したムハンマドだったが、そうではないということをやがて知るに至り、怒りが頂点に達した。それは危険な兆候だった。それを知る取り巻きたちは、なんとかイマージュと連絡を取ろうとしたができなかった。



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