生物の先生
ユラカモマ
大半の人間は異性も同性もいけるらしい。ただ欧米から入ってきた常識がその事実に蓋をしているだけで。
人の行動はすべて遺伝子と環境によって決定されると日々主張している生物の先生がそんなことを言い出したとき教室は静かに色めきだった。確かに同性愛者が本当に少数派であったなら子を成すことのないその愛はとっくに淘汰されてしまっているのだろう。
その事は私の胸にわずかな期待を抱かせた。教卓の横で今度はミツバチについて語りだした先生を目だけ上げて盗み見る。前を照らす照明が指輪をぴかりと光らせる。そう見えるのも先生の言うところの環境要因なのでしょうか?
シャーペンを持つ右手に力が入りじわりと汗がにじんでいる。冷房で冷えた教室の中、暑くなった頭を冷やすように黒板を睨んだ。閉じた窓の外からはやかましいセミの声がする。いっそ7日の命ならどうにでもなれと思えたものを。
生物の先生 ユラカモマ @yura8812
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