第四葉 「批判」と「非難」は違います
「正しい問いを見つける」ために大切なことなので、次に「批判」と「非難」の違いについて述べます。批判と非難は、世の中では一緒くたにされてしまって、いずれもなにか悪い行いのように受け止められがちです。しかし、この二つは、なにからなにまで、その対象も、方法も、内容も、自己および他者との関係も、効果もすべてが異なります。
批判とは、他者の思考の論理や行動の論理に対して、論理的に正しいか間違っているかを吟味する作業です。他者への批判の方法を応用して、自分自身の思考の論理や行動の論理が間違っていないかを吟味することができます。「自己批判」ですね。また、批判を行うためには、その前提条件として二つのことが必要となります。ひとつは、相手の論理が「批判に値する」という肯定的な評価です。もうひとつは、相手に対する敬意です。批判によって相手の論理の全部または一部が正しいと証明される場合もあります。自分の気づかなかった誤りに気づかせてもらえるので、真理を求める人からは「正しい批判」は歓迎されます。誰かから批判された場合、その批判の内容が正しいかどうかを吟味することを「反批判」といいます。批判・反批判は積み重ねられ、引き継がれて共有の知的財産となっていきます。正しい批判は、共に真理を探究する同志としての相互尊重を育みます。
他方、非難とは、他者の人格や存在そのものに対して、感情にまかせて否定的な言葉を浴びせることです。批判とは異なり、原則として自分自身に対して向けられることはありません。非難は相手の人格や存在そのものに対する攻撃なので、非難を受けて傷つくことはあってもプラスになることはありません。関係の悪化により非難した側も結局傷つくことになります。非難は、人間関係の対立・悪化を助長します。
この違いを分かりやすく山登りに例えてみましょう。登るルートは無数にあり、そのどれにも平坦なところと難所とがあります。自分からみて右のルートであろうと左のルートであろうと、目指す先は一つです。真心からその高みに到達したいと望む者であれば、どのルートから挑む者に対してであっても、同志として敬意を持ち、その振る舞いから学び、ときに相手を励まし助けることができます。己が何を目指しているのかを見失い、どこにいるのかも分からず、ただつかの間他者よりわずかでも優位に立とうと争い、だまし合い、罵り合っている者の背に付き従っていては、いずれ山の怒りに触れて集団で落命する他ありません。
と、ちょっと堅苦しい話になってきましたかね・・・・・・。いけませんね(笑)。このおはなし会の場では、非難はいけませんけれど、正しい批判は厳しければ厳しいほど歓迎されます。ともに真理を探究するなかまとしてお互いに高め合うことができればよいですね。
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