第20話 孤独な心 (13) ~夕貴~

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薬を飲んでぐっすり寝たのが良かったのか、今朝には平熱に戻り、心配そうなセイを振り切って早めに学校に向かった。私が休めばきっとセイも仕事を休むだろうと思ったのもあるが、しばらく一人で考えたかったというのもあった。


 『夕貴がお医者さんになるのを良子さんも楽しみにしていたんでしょう』


 あの時、セイの何気ない言葉に咄嗟に表情を繕って返事を返したけど、私の心の中は酷く動揺していた。彼女は『夕貴のお母さん』と言っていたのに、あの時だけ母を『良子さん』と名前で呼んだ。そして、母にしか話した事のない私の医者になりたいという夢を知っていた。


 私の母は無関係な借金を父に背負わされてから、この街に越してきた為、殆んどと言って良いほど親しい人はいなかった。母と毎日話をしたが、職場で名前を呼び合うほどの友人は聞いたことがない。それに、慎重すぎる性格だった母が、娘の夢を他人に簡単に話すとは思えなかった。


つまり、母とセイは娘の事を話すほど親しかったという事だ。今まで二人の関係など考えてもいなかったが、もし、二人が親密な関係だったのなら……

そこまで考えてから、思わず足を止めた。



『子供には手は出さないわよ』


「まさか………」


 どくん、と心臓が跳ねる。座り込みそうになるのを我慢しながら必死で足を動かした。自分で考え付いた結論を慌てて否定するも、なかなか消えてくれない。

 一緒に過ごした中で聞いたセイの何気ない言葉、写真の母を見た時の横顔、そして、ずっと不思議だった私への態度、その全てがまるでパズルのピースの様に次々と埋まっていく。



『これ以上生きていく意味がなくなったからかな』


 思い出した彼女の言葉が胸に突き刺さる。

 私はもしかして大変な勘違いをしているのではないだろうか。そう思う一方で、幾つかの光景が甦る。セイと母のやり取り、母の泣いていた後ろ姿。しかも、私は彼女から「お金を払って母を抱いた」と直接聞いている。相反する出来事が私を混乱に陥れる。

 これは可能性だ、まだきちんとセイに確認した訳じゃない。そう思っているのに何故か胸がずきりと痛む。



『夕貴』


 私を呼ぶセイの声が聞こえた気がした。無機質な声が優しげに聞こえるようになったのはいつからだろう。不意に、彼女をもっと知りたい、そんな想いがわき上がってくる。

 未だ自分の中で小さく渦巻く気持ちに気がつかない振りをして、見えてきた学校への道を進んだ。


 何度も浮かび上がる考えを振り払う様に授業に意識を向けたおかげか、あっという間に一日が終わり、手を振る京子と笑って別れる。京子とも一日一緒に過ごして色々話をしたはずだが、正直、良く覚えていない。気を抜くと、心はずっとセイの事ばかりだった。

 うじうじ悩んでいる自分が嫌になって、気持ちを切り替えるように胸のポケットを押さえると、朝持たされたセイの家の鍵が入っている感触がある。


「ストーカーの件で手がかりがあったの。しばらく迎えには行けそうにないけど、一人で大丈夫?」


 そう言った彼女の顔が思い浮かんだ。気がつけばセイに甘えてばかりで、ろくにお礼すら言えていない。頼りっぱなしの自分が何かセイの為に出来ることはないだろうか、ふと一つの可能性を思いつく。喜んでくれるかは分からないけれどやってみる価値はありそうだと思い急いで帰宅した。

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