#14

視界には見慣れた白い天井と照明

それを見ただけで、うっかり寝落ちしたのが解った

時計を確認すると18時を過ぎている

聖母のもとへ行きそびれた


外の空気が吸いたくなりベランダの窓を開けると

霧雨薫る夏の夕方が起き抜けの体に舞い込んできた


表通りから一本入った道を行き交う人たちを眺め

少し前の戸惑う自分とは対極にいる落ち着きは

酒に頼らず自分を保てる希望と兆しだろう


雨は上がり、ぼやけた月を見ながら

久しぶりにベランダで煙草を吸ってみた

「情緒不安定かもな」

自分で自分を皮肉った頭上には柔い光を放つ僅かな星が見えた


翌日からは、いつもと変わらない日々が訪れ

締め切り間近の仕事を片付けると金曜日の早朝になっていた

あっという間に新しい週末になり、急ぎの仕事もなくなると

緊張感は極端に薄れ、腑抜け寸前の気の抜けようだった


ソファーやベットで寝ると深夜まで起きない可能性が濃厚なので

テレビのオンタイマーをセットしてキッチンに枕を持ち込み

床の上で仮眠をした


短く深い眠りから覚め泥のような体を床から剥がし

散らかった部屋を掃除して、たまった洗濯物を洗い終えると

ジリジリと焼き付ける西日がベランダから射しこんでいた


今なら行けるだろう、診察券を確認して先週行きそびれた場所に向かった

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